実写『耳をすませば』はどんな映画?雫と聖司の10年後を描く作品

実写版の『耳をすませば』は、雫と聖司の中学生時代に加えて、大人になった二人の姿も描く映画です。「アニメの物語をそのまま実写にしたの?」「10年後の雫は小説家になっている?」と気になる人もいるでしょう。

2022年公開の実写『耳をすませば』は、柊あおいさんの漫画を原作に、中学生時代と、映画オリジナルの10年後を描いた作品です。大人の雫を清野菜名さん、聖司を松坂桃李さんが演じています。

10年後の雫は、出版社で児童書の編集者として働きながら物語を書き続けています。聖司はイタリアでチェロ奏者として活動しており、二人は離れた場所で、それぞれの夢に向き合っています。

この記事では、実写版の基本情報、物語の設定、主なキャスト、アニメ版と混同しやすい違いを整理します。前半では結末に踏み込まず、どんな映画なのかが分かるように紹介します。

実写『耳をすませば』とは?中学生時代と10年後を描く映画

実写『耳をすませば』は、2022年10月14日に公開された映画です。原作は柊あおいさんの同名漫画で、監督・脚本は平川雄一朗さんが担当しています。

特徴は、雫と聖司の出会いだけでなく、その出会いから10年がたった大人の時間も描くことです。松竹の公式作品紹介でも、10年後の部分は完全オリジナルの物語と説明されています。

出典:松竹公式『耳をすませば』作品情報

項目内容
公開日2022年10月14日
原作柊あおい『耳をすませば』
監督・脚本平川雄一朗
主演清野菜名、松坂桃李
構成の特徴中学生時代と、オリジナルの10年後を描く

「あのころの約束」と「今の自分」を並べて見る構成

中学生のころは、好きなことや目標を、未来へ向かって語ることができます。しかし、大人になれば、目標に近い場所で働いていても、思い描いた自分になれているとは限りません。

実写版では、夢を語った二人と、その夢を抱えて日々を過ごす二人が描かれます。中学生時代を懐かしむだけでなく、当時の思いが大人の生活の中でどう続いているのかが、物語の焦点になります。

「10年後」と聞くと、夢がかなった結果を見せる話を想像するかもしれません。けれど公式のあらすじで紹介されているのは、雫が思うようにいかず、もがいている姿です。

時間がたてば、自動的に答えが出るわけでもない。そんな大人の難しさを含んだ設定といえるでしょう。

実写版のあらすじ|日本の雫とイタリアの聖司

物語の出発点にいるのは、読書が好きな中学生の月島雫です。図書貸出カードで繰り返し見かける「天沢聖司」という名前が、彼女の気になる存在になります。

やがて出会った聖司には、音楽の道へ進む夢があります。雫も彼に刺激を受け、物語を書くことに向き合うようになります。

そこから10年後、二人は日本とイタリアで離れて暮らしています。雫は児童書の編集者として働き、聖司はチェロ奏者として活動しています。

公式の紹介では、互いの存在を支えに夢を追っていたものの、仕事で大きなミスをした雫が、自分の進む道を問い直す流れが示されています。

出典:実写映画公式サイト・物語と本予告の紹介

雫は児童書の編集者。書く夢も続いている

大人になった雫の職業は、出版社の編集者です。ここで、「本に関わる仕事に就いたこと」と「自分の物語を作家として世に出すこと」は分けて考える必要があります。

編集者も、本を作るうえで重要な仕事です。ただ、誰かの作品を届ける仕事をしているからといって、自分が書きたいという願いまで満たされるとは限りません。

実写版の公式紹介では、雫は編集の仕事をしながら、物語を書き続けていると説明されています。「小説家として成功した雫の暮らし」を描く設定ではないのです。

好きなものの近くで働くことと、自分の夢がかなうことの間にある距離。雫の仕事の設定には、そんな視点で考えられる部分があります。

本が好きで、その世界に関わっている。それでも自分の目標には届かない。このもどかしさは、夢を完全に諦めたとも、順調にかなえているとも言い切れないところにあるんやと思います。

聖司はチェロ奏者としてイタリアで活動する

実写版の聖司が目指すのは、チェロ奏者としての道です。中学生のころにイタリアへ渡り、10年後も音楽に向き合っています。

ただし、海外で活動していることだけを根拠に、「聖司はすでに成功していて、雫だけが取り残されている」と決めつけるのは早いでしょう。

公式サイトの聖司紹介では、彼についても、情熱を持ちながら行き詰まりやもどかしさを抱える人物として説明されています。

出典:実写映画公式サイト・聖司の人物像と松坂桃李さんの役作り

夢のために行動できた人にも、その場所へ進んだからこその壁がある。二人を単純な成功と失敗で分けずに見ることが、この映画を知るうえでは大切です。

実写版はアニメの続編?聖司の夢の違いに注意

実写版を紹介するとき、特に気をつけたいのが、アニメ版との関係です。

実写版の10年後は、この映画のために加えられたオリジナルの展開です。アニメ版の登場人物の将来が、そのまま確定したものとして扱うことはできません。

分かりやすい違いが、聖司の夢です。アニメ版ではヴァイオリン職人を目指しますが、実写版ではチェロ奏者を目指しています。

アニメ版の設定は、ディズニー公式の『耳をすませば』作品紹介でも確認できます。同じ名前の人物でも、進もうとしている専門の道が異なるのです。

そのため、アニメ版でヴァイオリンを作っていた聖司が、後にチェロ奏者へ転向した、と補って説明する必要はありません。それぞれの映像作品の設定として受け止めるのが自然です。

地球屋、図書カード、バロンなど、共通する要素はあります。その親しみを感じながらも、実写版独自の雫と聖司の物語として見ると、設定の違いを整理しやすくなります。実写『耳をすませば』の主なキャスト|二つの時代を別の俳優が演じる

実写版では、中学生時代と大人になった二人を、それぞれ別の俳優が演じています。

大人の雫役は清野菜名さん、聖司役は松坂桃李さん。中学生の雫役は安原琉那さん、聖司役は中川翼さんです。

登場人物中学生時代10年後
月島雫安原琉那清野菜名
天沢聖司中川翼松坂桃李

出典:ソニー・ピクチャーズ公式・中学生時代のキャスト発表

二つの時代が描かれることで、同じ人物が何を持ち続け、どこで変わったのかに注目できます。中学生時代のまっすぐな願いと、大人になってからの迷い。その違いが、この作品の見どころの一つです。

聖司の役作りでは、大人になっても残る情熱を大切にしている

松坂桃李さんは、公式サイトで紹介されたコメントの中で、10年後の聖司にも、情熱から生まれる行き詰まりや、まっすぐさを残そうとしたことを語っています。

出典:実写映画公式サイト・松坂桃李さんの役作りについて

ここから分かるのは、大人の聖司が、何もかも解決した完成形として作られているわけではないということです。

中学生のころの情熱が残っているからこそ、進めないときにも苦しくなる。目標がはっきりしている人には、その人なりの難しさがあるという人物像です。

雫だけを「迷っている人」、聖司だけを「迷わず進める人」と分けずに見ると、離れた場所にいる二人の姿を、より丁寧に受け止められるでしょう。

主題歌は杏が歌う「翼をください」

実写『耳をすませば』の主題歌は、杏さんが歌う「翼をください」です。アニメ版で印象的な「カントリー・ロード」とは異なります。

主題歌については、ソニー・ピクチャーズ公式の発表で確認できます。

同じ題名の映画なので、アニメ版と同じ歌が主題歌だと思っていると、ここでも違いを感じるかもしれません。音楽も、実写版の物語を形作る要素になっています。

「翼をください」という曲名を、離れた国で夢を追う二人の設定と重ねると、今いる場所から先へ進みたいという願いを連想できます。ただし、これは曲と物語を並べたときにできる解釈です。歌詞の一つひとつが、特定の場面や人物を指すと決めつける必要はありません。

実写版の見どころは、夢を持ち続ける大人の時間

この作品を紹介するうえで注目したいのは、夢を語る中学生時代と、その夢を抱えたまま働く大人の時間が並べられていることです。

雫は、本に関わる仕事に就きながら、自分の物語も書き続けています。しかし、好きな分野で働いていることと、自分の望む成果が出ることは、同じではありません。

仕事で責任を果たすこと、自分の創作を続けること、離れて暮らす相手を思うこと。それぞれ大切でも、すべてが同じ調子で進むとは限らない。公式に紹介されている雫の状況には、そうした難しさが見えます。

昔の約束は、支えにも自分を測る基準にもなる

中学生のころに交わした約束は、離れて暮らす二人を支えるものとして紹介されています。一方で、当時の目標を覚えているからこそ、今の自分との距離が気になることもあるでしょう。

これは、作品の設定から考えられる視点です。約束があるから必ず苦しくなる、あるいは必ず頑張れるという単純な話ではありません。

「あのころは、もっとできると思っていた」と感じるとき、過去の自分の言葉が励ましになることもあれば、重く感じられることもある。実写版の10年後という設定は、その両方を考える入口になります。

夢を持っていたことと、夢を抱えながら毎日を暮らすことには、違う難しさがあります。

若いころの気持ちを忘れなければ、それだけで全部うまくいくわけでもないんよな。仕事も生活もある中で、それでも何を続けたいのか。雫の設定には、そんな問いを重ねることができます。

恋愛と自分の目標を、どう両立していくのか

雫と聖司は、互いを思いながら、それぞれの場所で夢を追っています。そのため、恋愛だけを見ても、仕事や創作だけを見ても、二人の状況は捉えきれません。

大切な相手がいることは、心の支えになり得ます。しかし、相手が自分の仕事や創作を代わりに進めてくれるわけではありません。

自分の課題には自分で向き合う必要があり、それでも相手の存在が力になる。この二つがどう重なっていくのかが、物語を見る際の注目点です。

恋がかなえば人生の問題も全部解決する、という見方ではなく、相手を大切にしながら自分はどう生きたいのか。その視点で見ると、大人になった二人を描く意味を考えやすくなります。

アニメ版を知らなくても実写『耳をすませば』は見られる?

実写版には中学生時代の出会いも描かれるため、アニメ版の知識を前提に、10年後だけが始まる構成ではありません。

初めて『耳をすませば』に触れる人も、雫と聖司がどのように出会い、互いを意識するようになったのかを、この映画の中でたどれます。

アニメ版を知っている場合は、地球屋やバロン、図書カードといった共通する要素に親しみを感じられるでしょう。その一方で、聖司の目指す道などには違いがあります。

アニメ版で描かれていない将来の答え合わせとして見るより、同じ原作から広がった実写版独自の物語として捉えると、内容を整理しやすくなります。

比べる場合も、「同じ場面が再現されているか」だけでなく、中学生時代と大人の時間を並べることで、夢や恋の見え方がどう変わるのかに注目すると、比較の幅が広がります。

まとめ|実写『耳をすませば』は、約束の先を描く独自の物語

実写『耳をすませば』は、柊あおいさんの漫画を原作に、中学生時代と、映画オリジナルの10年後を描いた2022年の作品です。

清野菜名さん演じる雫は、児童書の編集者として働きながら物語を書き続け、松坂桃李さん演じる聖司は、イタリアでチェロ奏者として活動しています。二人が夢と恋に向き合う姿が、物語の中心です。

アニメ版とは聖司の夢などに違いがあり、実写版の展開を、そのままアニメ版の確定した将来として扱うことはできません。

この作品で気になるのは、10年後に何者になったかだけでなく、思いどおりに進まない日々の中で、何を大切にし続けるのかという部分です。あのころの約束を抱えた二人が、今の自分とどう向き合うのか。そこに注目すると、実写版ならではの物語が見えてきます。

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