#003 地域おこし協力隊に入って

――ヤギが行方不明になった話と、命の重さに震えた日の記録です。

僕が地域おこし協力隊に入ったとき、農業研修チームには男4人、女の子が1人。1年後にはもう1人女の子が加わってきました。

伝統工芸班には草木染めを担当する女性が3人ほどいたかな。

先輩の協力隊もいて、「緑の協力隊」という1年交代の制度で来ている人もいました。

本当に、いろんな人が集まっていました。


みんなで鶏をさばいた日のこと

ある日、協力隊のメンバーと「鶏をさばいて食べてみよう!」ということになりました。

「命をいただくって、どういうことなんだろう?」

実際にやってみようという話になり、大人の鶏を一羽、みんなで手分けして捌くことに。

首をはねてくれたのは女の子、捌いたのは男たち。そして、その場でバーベキューをして食べました。

焼きあがった鶏肉を噛みしめながら、僕の心はモヤモヤしていました。

「こんな複雑な思いをするくらいなら、鶏肉は我慢できるかもしれない」

スーパーでは、きれいにパックされた鶏肉を何の抵抗もなく買うのに。

焼き鳥屋で出てくる串焼きも、ありがたく食べてるのに。

でも実際に――さっきまで生きてた鶏を、自分の手で命を絶たなければならない。

しかも、その鶏にはミミズをあげてしまっていて、ほんの少し情が湧いていた。

だから、余計につらかった。

命の重みを、五感で感じた体験でした。


感謝の視点が変わった

あの体験をしてから、僕はお店に対しても、誰かの手間に対しても、ものすごく感謝するようになりました。

スーパーに並ぶあの肉だって、誰かがさばいて、運んで、売ってくれてる。

そんな「当たり前」は、田舎に来て初めて見えるようになったんです。

毎日の生活に、感謝が溢れていた。


協力隊同士の「家見せっこ」

地域おこし協力隊は、みんな全国から集まってきていました。

ある日、「君の家はどんな家?」という流れで、互いに住んでる家を見せ合うことに。

田舎なので、基本は一人一軒。家族連れはそのまま家族で住んでいました。

部屋は余りまくる。使い放題。

しかも、「内装は自由に変えていいよ~」なんて言われることも多くて、

  • 壁をぶち抜いて広いリビングにする人
  • ふすまを全部はがす人
  • 鶏を飼い始める人
  • ミツバチを育てる人
  • ヤギを飼う人
  • 薪ストーブを導入する人

ほんと、思い思いにやってました。


行方不明のヤギ「フー」と「メイ」

中でも、特に印象に残っているのが、ヤギを飼っていた協力隊の話です。

そのヤギには名前がついていました。

「フー」と「メイ」。

ある日、その2匹が突然姿を消してしまったんです。

協力隊の仲間は心配して、村の放送までお願いしました。

「ヤギの“フー”と“メイ”が行方不明になりました。見かけた方は…」

そう。

まさかの――行方不明(フーとメイ)

笑ってはいけないんだけど、なんだか絶妙にツボで(笑)

結局、2匹は見つからなかったそうです。

でも、その話はいまでも僕の記憶に強く残っています。


おわりに

最後まで読んでくれて、本当にありがとう。

「人と違っても、自分らしく暮らせる場所は、きっとどこかにある。」

そんなふうに思えるきっかけが、僕にとっての田舎暮らしでした。

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