『ハウルの動く城』の王宮の場面で、サリマンのそばにいる、よく似た顔の少年たち。「ハウルの子ども時代に似ているけれど、何者なの?」と気になる存在です。
彼らは、サリマンに仕える「小姓(こしょう)」たちです。そばで用事を務める従者であり、ハウル本人が何人にも分かれているわけではありません。
ただし、小姓という役割が分かっても、なぜ容姿がそろっているのか、ハウルとどのような関係があるのかまで、映画の中ですべて説明されるわけではありません。
この記事では、サリマンの手下として登場する小姓たちの役割と、ハウルに似て見える特徴を整理します。そのうえで、本編で分かることと、制作関係者の発言、そこからの考察を分けて紹介します。
※ここから『ハウルの動く城』の王宮の場面や、物語の展開に触れます。
サリマンの手下の少年たちは「小姓」
小姓とは、身近で用事を務める従者のこと
小姓という言葉は、日常ではあまり使いません。簡単にいえば、身分の高い人物の近くに仕え、身の回りの用事や取り次ぎなどをする役目を指します。
『ハウルの動く城』に登場する少年たちも、サリマンのそばに控え、彼女に仕える立場です。「サリマンの手下」という検索語で探している、髪形や服装の似た少年たちは、この小姓たちに当たります。
ただ、「手下」と聞くと、敵を追いかけたり戦ったりする集団を想像するかもしれません。小姓はそれよりも、サリマンの身近で働く、お付きの者と捉えたほうが役割をつかみやすいでしょう。
彼ら一人ひとりの生い立ちや、王宮へ来た経緯が紹介されるわけではありません。映画では個別の人物として深く掘り下げるより、サリマンの周囲にいる、よく似た少年たちとして描かれています。
小姓という呼び名だけでは、魔法使いかどうかまでは決まらない
サリマンは強い魔力を持ち、ハウルの師匠でもある人物です。そのそばにいる少年たちを見ると、「この子たちも魔法の弟子なのかな」と考えたくなります。
しかし、小姓は仕事や立場を表す言葉であり、それ自体が魔法使いの資格や身分を意味するわけではありません。
少なくとも、彼ら全員について、ハウルと同じ修業を受けたことや、同じ能力を持っていることが、映画の会話で説明されるわけではありません。サリマンに仕えているという事実と、詳しい魔法の設定は分けておく必要があります。
名前のある主要人物と違い、説明される情報が少ないからこそ、姿や動きが気になる。小姓たちは、そんな種類の脇役です。
サリマンの小姓がハウルに似て見えるのはなぜ?
そろった髪形と顔立ちが、ハウルを連想させる
小姓たちの特徴は、明るい色のおかっぱ風の髪形と、互いによく似た顔立ちです。服装もそろっており、集団としての統一感があります。
そこにハウルを連想させるところがあるため、単に王宮の使用人がいる、という以上の印象が残ります。「なぜサリマンの周りには、ハウルに似た子が何人もいるのか」という疑問につながるわけです。
ただし、似ていることから、すぐに「ハウルの兄弟」「ハウルの分身」「ハウルを複製した存在」と結論づけることはできません。映画本編では、そのような関係は説明されていません。
見た目の共通点は読み解く手がかりになりますが、血縁や魔法の仕組みを証明するものではない、ということです。
鈴木敏夫プロデューサーは『星をかった日』を手がかりに挙げている
小姓たちがハウルに似ている理由については、制作関係者が触れた発言があります。
2021年4月2日のスタジオジブリ公式アカウントによる質問企画で、鈴木敏夫プロデューサーは、サリマンの従者がハウルにそっくりなのはなぜかという質問に対し、ジブリ美術館の短編作品『星をかった日』に答えが隠されているという趣旨の回答をしています。
参照:スタジオジブリ公式アカウントの回答(2021年4月2日)
ここで注意したいのは、この回答自体は、小姓たちの出自や、容姿を変える魔法の手順まで説明したものではないことです。
『星をかった日』が手がかりとして挙げられたことと、「小姓たちは全員、サリマンの魔法で顔を変えられた」と断定することの間には、まだ距離があります。
気になる謎に公式からヒントが出ていると、つい一気に答えまでつなげたくなるんよな。それでも、制作側が実際に語った範囲と、そこから想像した部分は分けて読むほうが、この場面の面白さを丁寧に追えます。
小姓たちは、サリマンとハウルの関係を考える手がかりになる
サリマンはハウルの師匠であり、彼の才能を知っている人物です。王宮の面会場面でも、ハウルを自分の管理の及ぶ場所へ戻そうとする姿勢が見えます。
その周囲にハウルを連想させる少年たちがいることで、サリマンがハウルをどう見ているのか、という疑問が生まれます。優秀な弟子として期待しているのか、手元から離れたことを受け入れがたいのか。容姿の共通点は、そうした関係を考える入り口になります。
ただし、ここから「サリマンはハウルに恋をしている」と言い切ることもできません。才能への評価、師匠としての思い、国家に従わせたい立場など、複数の要素を考える余地があります。
小姓たちがハウルに似ていることは、サリマンの内面を考える手がかりにはなりますが、その感情を一種類に決める証拠ではありません。
むしろ、そばに控える小姓たちと、王宮から距離を置いて生きるハウルを比べると、同じ人物の周囲にいながら、従う側と離れる側の違いが見えてきます。そこには、サリマンとハウルの関係を読み解く、もう一つの視点があります。
小姓たちとハウルを比べると、王宮との距離が見えてくる
サリマンのそばにいる少年たちと、呼び出しに応じないハウル
小姓たちは、サリマンの身近に控える存在です。一方、かつて彼女の弟子だったハウルは、王宮からの召集に素直に応じようとしません。ソフィーを自分の母親として王宮へ向かわせ、自分が出向くことを避けようとします。
この違いに注目すると、見た目の似た人物たちが、サリマンに対して異なる位置にいることが分かります。小姓たちはそばに仕えていますが、ハウルは距離を保とうとしているのです。
ただし、これだけで「小姓には自由意思がない」と決めつけることはできません。彼らが何を望み、どのような事情で仕えているかは、詳しく描かれていないからです。
比較できるのは、あくまで画面に表れる立場の違いです。サリマンの周囲にいる小姓たちと、そこへ戻ることをためらうハウル。その配置が、師匠と弟子の緊張した関係を際立たせていると考えられます。
ハウルにとって王宮へ戻ることは、単なる里帰りではない
サリマンは、ハウルの才能を高く評価しています。しかし、彼女のもとへ戻るということは、懐かしい先生に会いに行くことだけを意味しません。戦争の続く状況では、その力を国のために使うよう求められることにもつながります。
ハウルが避けようとする理由には、こうした王宮との関係があります。そこに、彼自身の恐れや、悪魔との契約をめぐる事情も重なっています。
小姓たちは、その王宮の内側にいる人物です。彼らが整った姿でサリマンの周囲にいることで、王宮という場所の秩序が視覚的に伝わります。その中へ、不安を抱えたソフィーや、思惑を持つハウルが入ってくるため、面会場面の緊張が生まれます。
似た顔の少年が何人もいると、かわいらしさと同時に、少し落ち着かない感じもあるんよな。個々の性格が分からないまま、そろった姿だけが目に入る。その印象も、サリマンの周囲を独特な空間にしていると受け取れます。
小姓とヒン、荒地の魔女の手下は別の存在
ヒンもサリマン側の存在だが、小姓とは役割が異なる
サリマンに関わる登場人物としては、犬のヒンもいます。ソフィーが王宮へ向かう際に出会い、その後、彼女たちと行動を共にする犬です。
ヒンはサリマンの使い犬であり、人間の少年として登場する小姓とは別の存在です。「サリマンの手下」という言葉だけでまとめると、この二つが混ざりやすくなります。
整理すると、そろった髪形の少年たちが小姓、犬の姿でソフィーたちについていくのがヒンです。どちらもサリマンと関係していますが、同じ種類の従者ではありません。
また、ヒンの行動や結末から読み取れることを、そのまま小姓たち全員の気持ちに当てはめることもできません。小姓たちについては、描かれていない部分を残しておく必要があります。
黒く不定形な手下たちは、小姓とは違う
映画には、荒地の魔女に従う、黒く不定形な姿の手下たちも登場します。序盤でハウルやソフィーを追う存在と、王宮でサリマンに仕える少年たちは、見た目も所属も異なります。
そのため、「ハウルに出てくる手下は誰?」という疑問は、どの場面を指すかで答えが変わります。
- 王宮にいる、ハウルに似た少年たち:サリマンの小姓。
- 息を切らしながら歩く犬:サリマンの使い犬ヒン。
- 序盤などで現れる黒い不定形の集団:荒地の魔女の手下。
サリマンも荒地の魔女も魔法を使いますが、配下まで同じものとして扱うと、誰が何をしている場面なのか分かりにくくなります。まず姿と登場場面を分けると、関係を整理しやすくなります。
小姓たちの名前や正体は、どこまで分かる?
一人ひとりの詳しい人物紹介はない
小姓たちは、マルクルのように名前を呼ばれ、日常のやり取りを通じて性格が分かっていく人物とは異なります。映画本編では、一人ひとりの名前や年齢、家族関係が説明されるわけではありません。
同じような容姿だからといって、双子や兄弟であるとも限りません。また、人間なのか、何らかの魔法による存在なのかという疑問についても、今回確認できた情報だけでは詳しい成り立ちまで確定できません。
「サリマンに仕える小姓たち」という役割の説明と、「どのように生まれ、なぜその姿なのか」という出自の説明は、分けて考える必要があります。
『星をかった日』への言及を、細かな設定の証明にしない
前半で紹介した鈴木敏夫プロデューサーの回答は、ハウルとの類似を考えるうえで興味深い手がかりです。ただ、その回答だけから、二つの作品の登場人物の関係や、魔法の仕組みまで具体的に決めることはできません。
たとえば、「短編でこの人物がこうしているから、小姓は全員こういう存在だ」という説明には、その間をつなぐ根拠が必要です。似たデザインや雰囲気を楽しむことと、設定として同一だと断言することは別になります。
謎が残ると、答えを一つに決めたくなるものです。でも、小姓たちは、詳しく説明されないからこそ気になる存在でもあります。分かっている役割を押さえたうえで、サリマンの周囲に彼らが置かれている意味を考える。そんな見方もできるでしょう。
まとめ|サリマンの小姓は、ハウルとの関係にも目を向けさせる存在
『ハウルの動く城』でサリマンのそばにいる、よく似た少年たちは、小姓と呼ばれる従者です。ハウル本人の分身や兄弟だと説明されているわけではありません。
ハウルに似た容姿については、鈴木敏夫プロデューサーが『星をかった日』を手がかりとして挙げています。ただし、その回答を超えて、小姓たちの出自やサリマンの感情を一つに断定することは避けたいところです。
小姓たちを見るときのポイントは、何者かという疑問に加えて、サリマンのそばにいる彼らと、そこから距離を置くハウルの違いに注目することです。
わずかな登場でも、サリマンがどのような場所にいて、ハウルが何から離れようとしているのかを考えるきっかけになる。小姓たちは、王宮の場面にそんな奥行きを加える存在といえそうです。

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