『平成狸合戦ぽんぽこ』の絵コンテ集とは?『ジブリの教科書』との違い

『平成狸合戦ぽんぽこ』をもっと詳しく知りたいと思って本を探すと、絵コンテ集や『ジブリの教科書』が見つかります。「どちらも映画の解説本なの?」「場面の意味を調べるなら、どちらが合うのだろう」と迷うかもしれません。

結論からいうと、絵コンテ集は、画面の構成や演出指示、セリフをたどるための制作資料。『ジブリの教科書』は、作品についての論考やスタッフの回顧録などから、映画への理解を広げる本です。

どちらが上ということではなく、知りたい内容によって選び方が変わります。気になる場面を細かく確かめたいのか、作り手や書き手の言葉から映画を考えたいのか。まず、その目的を分けると整理しやすくなります。

この記事では、公式の商品紹介と出版社の書誌情報をもとに、2冊の内容と使い方の違いを紹介します。実際に読んだ体験談や、確認していない本文の要約は含めません。

『平成狸合戦ぽんぽこ』の絵コンテ集と『ジブリの教科書』を比較

最初に、それぞれの本の性格を並べてみます。

比較する項目絵コンテ集ジブリの教科書8
中心となる内容絵と文字による画面構成、演出指示、セリフなど作品についての論考、スタッフの回顧録など
知りたいことの例場面がどのような指示で組み立てられているか作品の魅力や制作を、関係者・書き手がどう語るか
判型・ページ数A5判箱入り・738ページ文庫判・240ページ
出版元徳間書店文藝春秋

出典:三鷹の森ジブリ美術館オンラインショップ『絵コンテ 平成狸合戦ぽんぽこ』/文藝春秋『ジブリの教科書8 総天然色漫画映画 平成狸合戦ぽんぽこ』

ページ数には大きな違いがありますが、それだけで情報量や読みやすさの優劣は決まりません。絵コンテと文章中心の論考では、そもそもページに載せる情報の形が違うからです。

「厚いほうが詳しいはず」と決めるより、自分の疑問に合う形式かを見ることが大切です。

絵コンテ集とは?映画を組み立てるための資料

完成した映像の前にある、絵と文字の指示を読む

絵コンテは、映画の場面を絵と文字で示した制作資料です。公式の商品紹介でも、カメラワーク、演出指示、セリフなど、映画作りに必要な情報を盛り込んだものと説明されています。

映画では、絵が動き、声や音楽が重なり、場面が次へ進みます。絵コンテでは、その流れを組み立てるために、どのような絵や指示が用意されたのかを追えます。

たとえば、ある場面で人物がどちらを見るのか、どのような動きをするのか、何を話すのか。そうした点を確認する手がかりになる資料です。

ただし、絵コンテを見るだけで、完成した映画の響きや動きまで同じように体験できるわけではありません。映像を紙に置き換えた鑑賞用の漫画とは、役割が異なります。

物語を追うだけでなく、「この場面は、どう作ろうとしていたんやろ」と考えるための入口になる本です。

高畑勲だけでなく、百瀬義行と大塚伸治も関わっている

ジブリ美術館公式ショップの紹介では、この絵コンテ集は、高畑勲監督とともに、百瀬義行、大塚伸治によって描き上げられたものと説明されています。

同ページでは、百瀬義行は画面構成など、大塚伸治はキャラクターデザインと共同の作画監督を担当した人物として紹介されています。

出典:ジブリ美術館公式ショップ・絵コンテ集の商品説明

ここから分かるのは、「監督作品だから、画面を作るための絵もすべて監督一人が描いた」とは限らないことです。

映画の完成形を見ると、一つの作品として受け取ります。しかし、その手前には、複数の作り手が、それぞれの仕事を通じて画面を形にしていく過程があります。絵コンテ集は、そうした制作のあり方に目を向けるきっかけにもなるでしょう。

月報には、作品解説や池澤夏樹の文章も収録

絵コンテ集の商品説明では、月報に作品解説があり、池澤夏樹が劇場用パンフレットに寄せた文章も再録されていると案内されています。

つまり、絵コンテだけで構成された本と考えるより、付随する文章もある資料として捉えると正確です。

ただし、公式紹介で収録が分かることと、その文章に何が書かれているかを理解したことは別です。具体的な主張や作品評価を知りたい場合は、掲載された文章そのものを読む必要があります。

本の紹介文から、書き手の結論まで先回りしない。この点は、制作資料を使って映画を考える際にも大切になります。

『ジブリの教科書8』とは?文章から作品を考える本

作品についての論考と、スタッフの回顧録を収録

『ジブリの教科書8 総天然色漫画映画 平成狸合戦ぽんぽこ』は、スタジオジブリと文春文庫編集部の名が掲げられた、文春ジブリ文庫の一冊です。

出版社の紹介では、池澤夏樹、似鳥鶏らが作品の魅力を論じ、スタッフの回顧録も収録すると説明されています。書誌情報は文庫判240ページ、発売日は2015年1月5日です。

出典:文藝春秋・公式書籍紹介

こちらは、映画の画面を作るための指示を順に追うというより、作品について書かれた言葉から、見方を広げる本と考えると分かりやすくなります。

「自分とは違う人が、この映画のどこに注目したのか」「制作に関わった人は、当時をどう振り返るのか」。そうした疑問から入りたい人には、公開されている収録内容が選ぶ手がかりになります。

ただし、「教科書」という名前でも、映画のすべての疑問に一つの正解を示す本だと考える必要はありません。作り手の回想と、作品を論じる文章では、情報の性格も異なります。誰が、どの立場から語っているのかを意識して読むことが大切です。場面の意味を調べたいなら、どちらを選ぶ?

描写やセリフを確かめたいなら絵コンテ集

「あの場面では何が起きていたのか」「誰が何を話したのか」といった、具体的な描写を調べる目的なら、絵コンテ集が候補になります。

絵コンテには、絵に加えて演出指示やセリフなどが記されています。そのため、映像を見て気になった箇所を、文字と画面構成からたどる手がかりになります。

ただし、絵コンテの記述と、完成した映画の描写が必ず一字一句・一場面ずつ一致するとは限りません。実際に映画で何が描かれたかを確認する場合は、本編との照合も必要です。

また、演出指示を確認できたとしても、そこに登場人物の心情や場面の意味がすべて説明されているとは限りません。

「指示として書かれていること」と「その指示から自分が読み取ったこと」を分ける。そうして使うと、絵コンテ集は考察を支える資料になります。

別の見方や制作の話を知りたいなら『ジブリの教科書』

「この作品は、ほかの人からどう見えているのか」「スタッフは制作をどう振り返っているのか」と知りたい場合には、『ジブリの教科書8』の収録内容が目的に合いそうです。

出版社は、作品の魅力を論じる文章と、スタッフの回顧録を収録すると案内しています。

出典:文藝春秋『ジブリの教科書8 総天然色漫画映画 平成狸合戦ぽんぽこ』

作品を見て自分なりの感想が生まれた後、別の書き手の文章に触れると、同じ場面でも違う点に注目していることがあります。自分の受け止め方を確かめたり、考えていなかった問いを見つけたりする読み方ができるでしょう。

ただ、誰かの論考を読んだからといって、自分の感想を全部その人に合わせる必要はありません。「そういう見方もあるんやな」と持ち帰るくらいでもよいと思います。

絵コンテも解説本も、映画の「正解集」ではない

制作上の情報と、作品についての解釈を分ける

映画について調べるときは、資料に書かれている内容が、どの種類の情報なのかを意識すると整理しやすくなります。

情報の種類読み取る際の考え方
絵コンテにある動作や演出指示制作段階で、どのように場面を組み立てようとしていたかを確認する
スタッフが語る回想語り手の立場や、振り返っている時期も踏まえて読む
作品についての論考書き手による読み解きとして受け止める
資料を読んだ自分の考察資料に明記された事実と区別して考える

たとえば、ある書き手が場面を特定の意味に解釈していても、それをそのまま「監督がそう意図した」と言い換えることはできません。

反対に、監督やスタッフが制作について語っている文章は、その人の発言として扱えます。ただし、短い一節だけを切り取ると、発言の前後関係が抜ける場合があります。

資料を使う目的は、自分の解釈を公式設定に変えることではなく、何を根拠に考えているのかを明確にすることです。

すぐに答えが出ない疑問も残してよい

映画には、人物の気持ちを一つに決められない場面もあります。資料を調べても、疑問に対する直接の説明が見つからないことはあるでしょう。

その場合、「書いていないから意味がない」とする必要も、反対に、想像した答えを確定情報として補う必要もありません。

描写を確かめたうえで、「こう受け取れる」「別の見方もできる」と考える余地を残せます。

作品を詳しく知るほど、何でも断言できるようになるとは限らへんのよな。分かっていることと、まだ分からないことが、以前よりはっきりする場合もあると思います。

読む前に、自分が知りたいことを一つ決めてみる

気になる場面から入るか、映画全体から入るか

どちらの本を選ぶか迷ったら、まず「今、何を知りたいのか」を一つ書き出すと選びやすくなります。

場面の動きやセリフ、画面の構成を追いたいなら絵コンテ集。作品への論考やスタッフの回想から理解を広げたいなら『ジブリの教科書8』。このように、目的と本の形式を合わせて考えられます。

ただし、具体的な疑問への回答が必ず載っていると保証されているわけではありません。購入前には、公式の商品説明や公開されている試し読みなどで、関心に合う内容かを確かめるとよいでしょう。

文藝春秋の書籍ページには、試し読みへの案内があります。まず公開されている範囲を確認する方法もあります。

参照:文藝春秋・書誌情報と試し読みの案内

同じ名前の関連書籍と取り違えない

書店や図書館で探す際は、作品名だけでなく、本の種類まで確認してください。

絵コンテ集を探しているのに、別の関連書籍を手に取ると、期待した情報の形と異なる場合があります。

今回紹介した絵コンテ集の目印は、徳間書店、A5判箱入り、738ページという書誌情報です。『ジブリの教科書8』は、文藝春秋の文庫判240ページで、ISBNは9784168120077です。

出典:ジブリ美術館公式ショップ・絵コンテ集/文藝春秋・ジブリの教科書8

中古品を選ぶ場合には、絵コンテ集の商品紹介で案内されている箱や月報などが付属するかも、出品ごとに確認すると安心です。同じ本の名前でも、付属品の状態まで同じとは限りません。

まとめ|絵コンテは場面の組み立て、教科書は作品を語る言葉へ

『平成狸合戦ぽんぽこ』の絵コンテ集と『ジブリの教科書8』は、どちらも作品への理解を広げる本ですが、中心となる情報の形が違います。

絵コンテ集は、絵・演出指示・セリフなどから場面の組み立てを追う資料。『ジブリの教科書8』は、論考やスタッフの回顧録などを通して作品を考える本です。

場面を細かく確かめたいなら絵コンテ集、別の視点や制作を振り返る言葉に触れたいなら『ジブリの教科書8』。まずは、自分の疑問に合うほうを選ぶと分かりやすくなります。

資料を読んでも、感想や解釈が一つに決まるとは限りません。むしろ、映画の描写と作り手の言葉、自分の受け止め方を分けながら考えられることが、関連書籍に触れる意味の一つではないでしょうか。

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