映画『もののけ姫』を見ていると、「この物語には原作があるの?」と気になることがあります。
アシタカやサン、エボシ御前、シシ神など、独特の世界観を持つ登場人物たち。
これほど壮大な物語なら、もともと小説や漫画があったのではないかと思う人もいるかもしれません。
さらに調べてみると、映画と同じ『もののけ姫』というタイトルの絵本が存在することもわかります。
では、その絵本が映画の原作なのでしょうか。
結論からいうと、1997年公開の映画『もののけ姫』は、宮崎駿監督によるオリジナル作品です。ただし、映画より前の1980年に描かれた初期構想があり、それをまとめた絵本『もののけ姫』も出版されています。
しかも、その初期構想は、私たちが知っている映画版とは大きく違う物語でした。
スタジオジブリの公式サイトでも、映画は宮崎駿監督の完全オリジナル作品として紹介されています。
この記事では、『もののけ姫』に原作があるのか、幻の絵本と映画版の違い、1980年の初期構想、宮崎駿監督が作品を完成させるまでの経緯を解説します。
※この記事には映画『もののけ姫』の設定や物語に関する内容が含まれます。映画の結末についての詳しいネタバレは扱いません。
『もののけ姫』に原作はある?映画は宮崎駿のオリジナル作品
『もののけ姫』は、1997年7月12日に公開されたスタジオジブリの長編アニメーション映画です。
原作・脚本・監督を担当したのは宮崎駿さんです。
ただし、公式クレジットに「原作・脚本・監督」と書かれているからといって、映画のもとになった別の小説や漫画が存在するという意味ではありません。
スタジオジブリの公式沿革では、1995年に制作が始まった『もののけ姫』について、宮崎駿監督の完全オリジナル作品と説明しています。
つまり、一般的な意味での原作漫画や原作小説を映画化した作品ではないのです。
映画『もののけ姫』の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | もののけ姫 |
| 公開日 | 1997年7月12日 |
| 原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
| 制作 | スタジオジブリ |
| プロデューサー | 鈴木敏夫 |
| 音楽 | 久石譲 |
| 上映時間 | 約133分 |
| 原作漫画・小説 | 映画の直接的な原作はなし |
| 初期構想 | 1980年に宮崎駿が制作 |
ここで面白いのは、映画には直接的な原作がないにもかかわらず、映画より前に『もののけ姫』という作品の構想が存在していたことです。
しかも、その内容はアシタカとサンの物語ではありませんでした。
『もののけ姫』には幻の絵本がある?1980年の初期設定版とは
実は、『もののけ姫』には映画とは別に、宮崎駿さんが描いた絵本が存在します。
その作品が『もののけ姫 1980年初期設定版』です。
スタジオジブリの公式出版情報によると、1980年に宮崎駿さんが描いた90枚のイメージボードを、絵本形式にまとめたものです。
イメージボードとは、物語の世界観や登場人物、場面の雰囲気などを絵で表現した資料のことです。
映画の制作が始まるよりもずっと前に、宮崎駿さんの中には『もののけ姫』という作品の構想が存在していたわけです。
参考:スタジオジブリ公式「もののけ姫 1980年初期設定版」
絵本版『もののけ姫』はどんな物語?
初期設定版では、もののけと少女の関係を中心とした物語が構想されていました。
映画版のように、アシタカが呪いを受けて旅に出たり、タタラ場と森の神々が対立したりする物語とは異なります。
初期構想は、人間の少女と異形の存在との関係を描く、昔話のような雰囲気を持った作品でした。
そのため、映画の内容を知っている人が絵本版を見ると、同じタイトルなのにまったく違う物語だと感じるかもしれません。
ここは、『もののけ姫』の原作を調べるうえで特に重要な点です。
絵本版は映画の物語をそのまま描いた原作ではなく、宮崎駿監督が以前に考えていた別の構想をまとめた作品です。
絵本は映画公開より前の1993年に出版された
『もののけ姫』の初期設定版は、映画公開前の1993年に絵本として出版されました。
つまり、映画が公開された1997年よりも前から、『もののけ姫』というタイトルの本が存在していたことになります。
この出版順序だけを見ると、絵本が映画の原作だと思ってしまうかもしれません。
しかし、映画版は初期構想から内容が大きく変更されています。
そのため、絵本と映画の関係は、一般的な原作と映像化作品の関係とは異なります。
絵本版と映画版『もののけ姫』は何が違う?
では、1980年の初期構想と1997年の映画版では、具体的に何が違うのでしょうか。
大きな違いは、物語の中心となる人物とテーマです。
| 比較項目 | 初期設定版 | 1997年の映画版 |
|---|---|---|
| 制作の出発点 | 1980年のイメージボード | 1990年代に制作された長編映画 |
| 物語の中心 | もののけと少女の関係 | アシタカ、サン、人間と森の神々 |
| 主人公 | 初期構想の少女など | アシタカ |
| 世界観 | 昔話や幻想的な物語に近い | 中世日本を思わせる社会と自然の対立 |
| 物語の構成 | 映画版とは異なる独立した構想 | 呪いを受けたアシタカの旅を軸に展開 |
| 作品の形 | イメージボードをまとめた絵本 | 長編アニメーション映画 |
同じタイトルを使っていても、内容は大きく異なります。
ただし、初期構想と映画版にまったくつながりがないというわけでもありません。
人間と異形の存在の関係や、自然へのまなざしなど、共通する発想を見いだすことはできます。
また、初期設定版に登場する少女の名前と、映画版のサンの名前とのつながりも指摘されています。
ただし、絵本の登場人物と映画の登場人物を、設定まで同一の存在として扱うことはできません。
初期構想から映画版へ大きく変化した理由
宮崎駿監督は、1980年の構想をそのまま映像化したわけではありません。
映画の制作が本格的に進んだ1990年代には、物語の中心となる人物や設定が大きく変化しています。
スタジオジブリの公式沿革によると、『もののけ姫』は宮崎駿監督が長年望んでいた時代劇として企画されました。
しかし、制作費は従来の約2倍となる20億円で、企画そのものが大きな挑戦だったと説明されています。
映画は1995年に制作が始まり、1997年夏に公開されました。
初期構想が生まれてから映画公開まで、およそ17年という時間が流れています。
その間に、宮崎駿監督自身の作品づくりや、社会を見る視点にも変化があった可能性があります。
ただし、どの社会的出来事がどの設定変更に直接影響したのかについては、本人の発言や制作資料を確認せずに断定することはできません。
それでも、初期構想と完成した映画を比べると、一つのアイデアが長い時間をかけて別の物語へ育っていったことがわかります。
最初に思い描いた物語が、そのまま完成形になるとは限らない。『もののけ姫』の制作過程には、長い時間をかけて作品を作り直す面白さがあるように思います。
初期設定版の「三の姫」と映画版のサンは同じ人物?
『もののけ姫』の初期構想を調べていると、気になるのが「三の姫」という人物です。
1997年の映画版には、山犬に育てられた少女・サンが登場します。
この二人には、何かつながりがあるのでしょうか。
初期設定版には「三の姫」という少女が登場する
1980年の初期設定版では、もののけと人間の少女を中心とした物語が描かれています。
その少女が「三の姫」です。
初期構想では、少女ともののけの関係が物語の重要な部分になっています。
一方、映画版のサンは、人間でありながら山犬のモロに育てられ、森を守るために人間と戦う少女です。
どちらも人間と異形の存在の関係に深く関わっていますが、物語の中で置かれている立場は異なります。
そのため、三の姫とサンを、設定まで同じ人物として扱うことはできません。
サンという名前は初期構想と関係している?
映画版の少女は「サン」と呼ばれています。
この名前については、初期設定版の「三の姫」とのつながりを考えることができます。
ただし、名前の由来について作者本人の説明を確認しないまま、三の姫がそのままサンになったと断定することは避けたいところです。
重要なのは、初期構想と映画版の間に共通する発想がありながら、登場人物の役割や物語が大きく変化していることです。
初期設定版の少女と、映画版のサン。
二人を比べることで、宮崎駿監督が同じような題材を、違う物語として描いていることが見えてきます。
『もののけ姫』と『シュナの旅』には関係がある?
『もののけ姫』の原作について調べると、もう一つ名前が挙がる作品があります。
それが、宮崎駿さんによる絵物語『シュナの旅』です。
『シュナの旅』は1983年に徳間書店から出版された作品で、映画『もののけ姫』よりも前に制作されています。
こちらも宮崎駿さん自身が物語と絵を手がけた作品です。
参考:徳間書店公式サイト
『シュナの旅』はどんな物語?
『シュナの旅』は、貧しい土地に暮らす若者シュナが、人々を救うために旅へ出る物語です。
シュナは、故郷の人々が飢えに苦しむ状況を変えようと、遠い土地にあるという穀物を求めて旅立ちます。
旅の途中では、厳しい自然や人間社会の問題に直面します。
この作品には、後の宮崎駿作品にも通じるような、自然と人間の関係や、旅を通して成長する人物の姿が描かれています。
アシタカとシュナには共通点がある?
『シュナの旅』の主人公シュナと、『もののけ姫』のアシタカには、いくつかの共通点を見いだすことができます。
例えば、どちらも若い男性が故郷を離れ、危険な旅へ出る物語です。
また、旅の途中で異なる立場の人々と出会い、人間社会の厳しさに向き合う点も共通しています。
ただし、旅に出る理由は異なります。
シュナは故郷の人々を救うために旅立ちます。
一方、アシタカはタタリ神から受けた呪いを解くため、そして自分の運命を見極めるために西へ向かいます。
そのため、二人を同じ人物として考えることはできません。
また、『シュナの旅』が映画『もののけ姫』の直接的な原作というわけでもありません。
『シュナの旅』は、宮崎駿監督が映画『もののけ姫』以前に描いていた世界観や物語の関心を知るうえで、参考になる作品といえるでしょう。
なぜ『もののけ姫』には原作があると誤解されやすいのか
『もののけ姫』はオリジナル映画であるにもかかわらず、原作があるのではないかと思われやすい作品です。
その理由として、いくつかの要素が考えられます。
① 映画と同じタイトルの絵本が存在するから
最も大きな理由は、映画と同じ『もののけ姫』というタイトルの絵本が存在することです。
しかも、初期設定版の絵本は1993年に出版されており、映画の公開よりも前です。
そのため、出版年だけを見ると、絵本を映画化した作品だと思ってしまうかもしれません。
しかし、絵本版と映画版では、物語の内容が大きく異なります。
絵本は映画のストーリーをそのまま描いたものではなく、宮崎駿監督が1980年に考えていた初期構想をまとめた作品です。
② 映画のクレジットに「原作・脚本・監督」とあるから
映画『もののけ姫』の公式クレジットには、宮崎駿さんが「原作・脚本・監督」と記載されています。
この「原作」という言葉から、別に原作本があると考える人もいるかもしれません。
しかし、ここでいう原作は、映画の物語そのものを宮崎駿さんが創作したという意味です。
原作漫画や小説を映像化したという意味ではありません。
③ 日本の歴史や伝承を思わせる世界観があるから
『もののけ姫』には、タタラ場での製鉄、山の神々、武士、村の暮らしなど、日本の歴史や伝承を思わせる要素が登場します。
そのため、古い民話や伝説をもとにした作品なのではないかと感じる人もいるでしょう。
実際、映画には日本の自然観や歴史的な文化とつながる要素が数多くあります。
しかし、そうした要素を取り入れていることと、特定の昔話をそのまま原作にしていることは別です。
『もののけ姫』は、さまざまな文化や歴史を思わせる世界観を持ちながら、宮崎駿監督が独自に作り上げた物語なのです。
初期構想から映画版へ|宮崎駿が描こうとしたものはどう変わった?
1980年の初期構想と1997年の映画版を比べると、『もののけ姫』という作品が長い時間をかけて変化してきたことがわかります。
初期設定版では、もののけと少女の関係が物語の中心でした。
一方、映画版では、アシタカとサンの関係だけでなく、エボシ御前やタタラ場の人々、森の神々など、さまざまな立場の存在が描かれています。
映画版では人間と自然の対立が大きなテーマになった
1997年の映画『もののけ姫』では、人間と自然の関係が重要なテーマになっています。
エボシ御前は、タタラ場の人々が生きていくために森を切り開こうとします。
一方、サンや山犬たちは、森を守るために人間と戦います。
どちらにも守りたいものがあります。
人間が生活するためには、自然の資源を利用する必要があります。
しかし、その行動によって森や動物たちの暮らしが失われることもあります。
映画は、そうした対立を単純な善悪だけで説明していません。
ここが、初期設定版と映画版を比べたときの大きな違いの一つだと思います。
一つの物語を長く考え続けることの面白さ
1980年に生まれた初期構想が、1997年にはまったく違う規模の映画として完成しました。
最初に考えた物語を、そのまま作り続けるのではなく、時間をかけて変化させていく。
その制作過程には、作品づくりの面白さが感じられます。
何かを始めたとき、最初に思い描いた形が必ずしも完成形になるとは限りません。
途中で考え方が変わったり、新しい問題に気づいたりすることもあります。
それは、必ずしも失敗ではないのでしょう。
むしろ、長く考え続けたからこそ、最初にはなかったものが生まれることもあるのだと思います。
『もののけ姫』の初期構想と完成した映画を比べると、作品は最初のアイデアに縛られなくてもいいんやな、と感じます。
ただし、宮崎駿監督が具体的にどのような心境の変化を経験したのかについては、本人の発言なしに断定することはできません。
ここで述べたのは、初期構想と完成作品の違いから読み取れる考察です。
『もののけ姫』の原作についてよくある疑問
『もののけ姫』に原作漫画はある?
1997年公開の映画『もののけ姫』には、直接的な原作となった漫画はありません。
宮崎駿監督によるオリジナル作品です。
『もののけ姫』の原作小説はある?
映画の直接的な原作となった小説もありません。
映画の公開に関連した書籍や絵本などは存在しますが、それらと原作小説は区別する必要があります。
1980年の絵本版は映画と同じ内容?
いいえ。1980年の初期構想をまとめた絵本版は、1997年の映画とは物語や登場人物の設定が大きく異なります。
映画版のアシタカとサンの物語を、そのまま描いたものではありません。
『シュナの旅』が『もののけ姫』の原作なの?
『シュナの旅』は、宮崎駿さんが1983年に発表した絵物語です。
旅をする主人公や自然と人間の関係など、映画『もののけ姫』と共通する要素を見いだすことはできます。
しかし、直接的な原作ではありません。
初期設定版の絵本は現在も読める?
『もののけ姫 1980年初期設定版』は、1993年に徳間書店から出版された書籍です。
ただし、現在の新品在庫や電子書籍の配信状況については、今回確認した資料だけでは判断できません。
購入を検討する場合は、出版社や書店の最新情報を確認してください。
まとめ|『もののけ姫』は原作漫画のないオリジナル映画
映画『もののけ姫』に原作があるのか、初期設定版の絵本や『シュナの旅』との関係を解説しました。
今回のポイントを整理すると、次のとおりです。
- 1997年公開の映画『もののけ姫』は宮崎駿監督のオリジナル作品
- 映画の直接的な原作漫画や原作小説は存在しない
- 1980年に宮崎駿が描いた初期構想が存在する
- 初期構想は1993年に絵本として出版された
- 絵本版と映画版では物語の内容が大きく異なる
- 初期設定版には「三の姫」という少女が登場する
- 『シュナの旅』にも共通する要素があるが、直接的な原作ではない
- 映画版では人間と自然の対立が大きなテーマとして描かれている
『もののけ姫』には映画の直接的な原作となった漫画や小説はありません。ただし、映画より17年前に生まれた初期構想があり、その世界を知ることができる絵本が存在します。
個人的に興味深いのは、同じ『もののけ姫』というタイトルでも、長い時間を経て物語が大きく変わっていることです。
最初に思い描いたものを、必ずそのまま完成させなければならないわけではありません。
時間がたつことで考え方が変わり、別の表現が生まれることもあります。
そして、1997年の映画『もののけ姫』は、アシタカやサン、エボシ御前たちを通して、人間と自然の関係を問いかける作品になりました。
初期構想を知ったうえで映画を見直すと、宮崎駿監督がどのような世界を描こうとしていたのか、また違った視点から楽しめるかもしれません。
映画の公式情報は、スタジオジブリ公式『もののけ姫』作品ページで確認できます。
初期構想については、スタジオジブリ公式『もののけ姫 1980年初期設定版』書籍情報も参考になります。

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