『風立ちぬ』に登場する大きな地震は、いつ起きたものなのでしょうか。「関東大震災の場面なのか」「映画の出来事は実話なのか」と気になるところです。
『風立ちぬ』の地震の場面が背景としているのは、1923年(大正12年)の関東大震災です。ただし、映画の登場人物の行動や会話まで、実際の記録を再現したものとは限りません。
スタジオジブリは、作品の時代背景に関東大震災が含まれることを説明しています。一方で、映画全体はフィクションであり、実在の時代や場所などを参考にしているとも案内しています。
出典:スタジオジブリ公式「野中くん発 ジブリだより」2013年7月号/スタジオジブリ公式「『ジブリの森』7月号は、『風立ちぬ』を大特集!」
この記事では、関東大震災の基本情報を確認しながら、歴史上の出来事と映画の物語を分けて整理します。登場人物の結末には触れません。
『風立ちぬ』の地震はいつ?1923年の関東大震災
関東大震災を引き起こした地震は、1923年9月1日午前11時58分に発生しました。元号では大正12年に当たります。
気象庁の解説では、地震の規模はマグニチュード7.9とされています。映画の地震を、昭和の戦争中に起きた出来事だと思っていた場合は、まず「大正時代の出来事」と捉えると、時代の位置関係が分かりやすくなります。
| 項目 | 歴史上の基本情報 |
|---|---|
| 発生日 | 1923年(大正12年)9月1日 |
| 発生時刻 | 午前11時58分 |
| 地震の規模 | マグニチュード7.9 |
| 災害の名称 | 関東大震災 |
これらは実際の歴史に関する情報です。映画の登場人物が、その日にどこで誰と出会い、何を話したかという物語とは、分けて考える必要があります。
「関東大震災」は、地震によって起きた災害を指す
普段は「関東大震災という地震」と表現することもありますが、厳密には、地震そのものと、それによって生じた災害には違いがあります。
総務省消防庁は、大正関東地震によってもたらされた災害を「関東大震災」と説明しています。強い揺れに加え、広い範囲で発生した火災も、被害を大きくした要因でした。
出典:総務省消防庁「令和5年版 消防白書:関東大震災の概要」
映画をきっかけに調べる場合も、「地面が大きく揺れた」という一つの現象だけでなく、その後の人々の生活にも影響した災害だったと押さえておきたいところです。
映画の中では、二郎が生きる時代のどこに当たる?
ジブリ公式によると、『風立ちぬ』が描くのは、1910年代半ばから約30年間です。関東大震災は、その長い時間の中に位置づけられています。
作品の背景には、震災だけでなく、世界恐慌や戦争もあります。そのため、映画の時代全体を、ひとまとめに「戦争のころ」と捉えると、それぞれの出来事の順序が見えにくくなります。
関東大震災は1923年。その後にも、社会や生活を大きく変える出来事が続いていく。この時間の流れを知ることで、二郎の人生が、長い時代の変化の中に置かれていることが分かります。
ただし、映画の時間経過を、史実の年表へ一場面ずつ機械的に当てはめることは避けたいところです。作品全体の年代と、個々の場面の正確な日時は、同じように確認できるとは限りません。
関東大震災が実際に起きたことと、二郎の体験が実話であることは別
『風立ちぬ』の主人公には、実在する堀越二郎の名前が使われています。さらに、関東大震災という実際の災害も登場するため、映画の出来事すべてが本人の体験のように感じられるかもしれません。
しかし、実在の人物と歴史的な出来事を組み合わせた作品でも、人物同士の関係や会話には創作が含まれます。
ジブリ公式も、本作について、実在の堀越二郎を主人公としたフィクションだと説明しています。
出典:スタジオジブリ公式「野中くん発 ジブリだより」2013年1月号
例えば、映画の中で誰かを助ける行動が描かれていたとしても、その場面だけを根拠に「実在の堀越二郎も同じ救助をした」とは言えません。歴史上の体験として紹介するには、本人の記録など、別の裏づけが必要です。
同様に、登場人物の気持ちを考える場合も、それは映画の描写についての考察です。実在した人物の心の中まで分かったことにはなりません。
現実味のある場面ほど、「本当にあったんやろな」と受け取りたくなるものです。だからこそ、歴史として確認できることと、物語として描かれたことを分けると、作品を落ち着いて見直せます。
関東大震災は東京だけの災害ではなかった
『風立ちぬ』をきっかけに関東大震災を調べるとき、もう一つ押さえておきたいのが、被害の広がりです。
東京の大火災を思い浮かべるかもしれませんが、実際の被害は東京だけに限られません。国土地理院の解説では、地域によって、火災、土砂災害、津波など異なる災害の記録が残されていることが紹介されています。
同じ地震であっても、暮らしていた場所や周囲の地形によって、人々が直面した状況は違います。
そのため、映画の一場面を、関東大震災のすべてを代表する記録として受け取ることはできません。作品が描く人物の視点と、災害全体の歴史を行き来すると、理解を広げやすくなります。
映画を入り口に、当時の写真や資料を見る
国立公文書館の「日本のあゆみ」では、関東大震災に関する説明と関連資料を確認できます。映画から関心を持った場合、こうした公的な資料も手がかりになります。
物語は、人物の行動や感情を通じて出来事を身近に感じさせます。一方、歴史資料は、当時の状況を記録から確かめるために役立ちます。
映画で気になったことを資料で調べ、資料で知ったことを踏まえて映画を見直す。そうすると、映像の印象と歴史的な事実を混同せずに、それぞれを理解できます。
地震の場面から何を考えられる?日常が変わるという視点
ここからは、歴史的な事実の説明ではなく、作品の背景から考えられることです。
飛行機を作る夢を持つ主人公にとっても、災害は自分の計画とは関係なく起こります。将来への希望があっても、その希望だけで周囲の状況を動かせるわけではありません。
この点から見ると、関東大震災という背景は、二郎の人生が、本人の意志だけでは決まらない時代の中にあることを意識させます。
自分が何をしたいかという願いと、実際にどのような状況で生きることになるか。その二つには、隔たりがあると考えられます。
これは、地震の場面について監督が語った意図として断定するものではありません。夢を追う主人公と、歴史的な災害が同じ作品の中に置かれていることからの読み取りです。
好きなことに打ち込める時間も、暮らす場所や周囲の人との関係があってこそ成り立つ。そう考えると、仕事の夢を描く映画に、生活を揺るがす出来事が含まれていることには重みがあります。
自分の努力で変えられることはある。でも、努力だけではどうにもならないことも起きるんよな。その両方がある中で、人は次の一日をどう過ごすのか。そんな問いにつなげて受け取ることもできそうです。
「震災が二人を結びつけた」とだけ説明しないために
二郎と菜穂子の関係に注目すると、地震の場面を、二人の物語が動くきっかけとして考えたくなるかもしれません。
ただし、登場人物の関係が物語上どのように変化するかという話と、実際の災害が持つ意味は、同じではありません。
一組の人物の関係だけに注目すると、その周囲で多くの人々の生活が変わったという背景が見えにくくなります。歴史を踏まえて考えるなら、二人の物語と、災害全体の大きさの両方に目を向けたいところです。
また、出会いから救助までの具体的な流れや、その瞬間の人物心理については、本編の該当箇所などを確認して論じる必要があります。歴史上の地震を確認できたことだけでは、個々の行動や気持ちまで裏づけられません。
歴史の確認は、登場人物の気持ちを自由に補ってよいという根拠にはならない。この区別を保つと、物語の考察も、描写に沿って深められます。
まとめ|地震は関東大震災が背景、人物の物語とは分けて理解する
『風立ちぬ』の地震の場面が背景としているのは、1923年(大正12年)9月1日の関東大震災です。作品の時代背景に関東大震災が含まれることは、ジブリ公式の解説でも確認できます。
一方で、映画全体はフィクションです。実際に起きた災害を背景にしていても、登場人物の出会いや会話、救助の行動まで、そのまま実在の人物の体験だったとは判断できません。
歴史としては、いつ、どのような災害が起きたのかを資料で確認する。映画については、人物がどう描かれているかを作品の中で確かめる。この二つを分けることが、理解の土台になります。
そのうえで地震の場面を考えると、二郎の夢だけでなく、その夢を抱いて生きるための暮らしや時代にも目が向きます。自分で選ぶ人生と、自分では選べない出来事。その関係を考える入り口にもなる場面ではないでしょうか。

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