『猫の恩返し』原作は漫画?『バロン〜猫の男爵』と誕生の経緯

『猫の恩返し』には原作があるのでしょうか。ジブリのアニメ映画として知っていると、漫画から生まれた作品なのか、それとも映画だけのオリジナルなのか、意外と迷いますよね。

答えは、柊あおいさんの漫画『バロン〜猫の男爵』が原作です。ただし、すでにあった漫画を映画にしようと選んだ、という説明だけでは、この作品の誕生の経緯を十分に伝えられません。

原作漫画は、宮﨑駿さんからの依頼をきっかけに描かれたもの。つまり、漫画と映画の関係を知るには、アニメーションの企画から原作が生まれた流れにも目を向ける必要があります。

この記事では、原作の作者と作品名、宮﨑駿さんが関わった経緯、そして『耳をすませば』とのつながりを整理します。物語の結末には触れず、まずは『猫の恩返し』がどのように形になったのかを見ていきます。

『猫の恩返し』の原作は柊あおいの漫画『バロン〜猫の男爵』

日本テレビの「金曜ロードシネマクラブ」は、『猫の恩返し』の原作を、柊あおいさんによるコミック『バロン〜猫の男爵』(徳間書店刊)と紹介しています。

映画と漫画でタイトルが異なるため、「『猫の恩返し』という漫画を探せばいいのかな」と思った人は、作者名の「柊あおい」と、原作名の「バロン」「猫の男爵」を目印にすると分かりやすいでしょう。

出典:日本テレビ「『猫の恩返し』原作は宮﨑駿監督からのオファーだった!?」

ここで整理しておきたいのが、原作者と映画の監督は別だということです。映画の公式クレジットは、次のようになっています。

担当名前
原作柊あおい
企画宮﨑駿
脚本吉田玲子
監督森田宏幸

『猫の恩返し』は2002年7月20日に公開された、上映時間約75分の作品です。宮﨑駿さんは企画として参加しており、監督を務めたのは森田宏幸さんでした。

出典:スタジオジブリ公式サイト『猫の恩返し』作品情報

「ジブリ作品だから宮﨑駿さんが原作も監督も担当している」とひとまとめにすると、作品を生み出した人たちの役割が見えにくくなります。漫画の物語を作る人、その物語を映画の脚本にする人、映像として演出する人。それぞれの仕事が重なって、私たちが知っている映画になっているわけです。

原作漫画は宮﨑駿からの依頼で生まれた

アニメの原作を描いてほしいという出発点

日本テレビの公式紹介によると、宮﨑駿さんは柊あおいさんに、『耳をすませば』に登場するバロン、ムタ(ムーン)、地球屋を使い、アニメの原作となる漫画を描いてほしいと依頼したそうです。

その依頼を受けて柊さんが物語を考え、描き下ろしたのが『バロン〜猫の男爵』でした。

この順序を知ると、「原作漫画がある」という言葉の受け取り方も少し変わりますよね。漫画が原作であることと、アニメの企画がきっかけで漫画が生まれたことは、両立しています。

『猫の恩返し』の場合は、映画化へ向けた働きかけが、原作となる物語の誕生にも関わっていたのです。

出典:日本テレビ「原作は、宮﨑駿監督からのオファー!?」

バロンが登場する世界を、別の物語へ広げる

ここからは、制作経緯を踏まえた作品の捉え方です。

すでにいる登場人物を使って新しい物語を作るとき、面白いのは「前と同じ人物が出てくる」という安心感と、「今回はどんな姿を見せるのか」という期待が一緒に生まれるところでしょう。

バロンという存在に惹かれた人にとっては、その人物がさらに活躍する世界への入り口になる。一方で、『猫の恩返し』から入る人には、ハルが出会う不思議な相手として登場する。同じキャラクターでも、どこから物語に入るかによって印象は変わります。

原作の誕生を知ると、バロンをもう一度登場させるだけでなく、新しい主人公が出会える物語として世界を組み立てることが大切だったのだと考えられます。

『耳をすませば』との共通点は、まず原作者にある

柊あおいさんは、『耳をすませば』の原作者でもあります。『猫の恩返し』とのつながりを考えるうえで、最初に押さえたいのはこの点です。

ただし、二つの映画に関係があることと、『猫の恩返し』の原作名が『耳をすませば』であることは別の話です。『猫の恩返し』の直接の原作として挙げられているのは、あくまで『バロン〜猫の男爵』です。

「同じ作者」「共通するキャラクター」「映画の原作となった漫画」を分けて考えると、関係がすっきりします。

たとえば、原作漫画を読みたい人が知りたいのは、どの本を探せばよいかということ。一方、バロンが両方に登場する理由を知りたい人は、作品がどうつながって生まれたかに関心があるはずです。似た疑問に見えても、答えるべき内容は少し違うんですよね。

そして、この二作品の関係には、作者が共通しているという説明から、もう一歩踏み込んだ発想もあります。それが、『耳をすませば』の月島雫が成長して書いた物語、という構想です。

ただ「続編」と呼ぶだけでは伝わりにくい、この物語ならではのつながり。原作の誕生を理解するには、その発想をどう受け取るかも大事になってきます。月島雫が成長して書いた物語、という誕生の発想

日本テレビの公式紹介では、柊あおいさんが、バロンを登場させるにあたり、『耳をすませば』の主人公・月島雫が成長して書いた物語という構想を取り入れたことが紹介されています。

ここは、現実の作者と、作品を生み出すうえでの発想を分けて受け取ると分かりやすいところです。実際に原作漫画を描いたのは柊あおいさん。その物語の背景に、雫の創作を思わせるイメージがある、という関係です。

したがって、『猫の恩返し』を、成長した雫本人の生活や恋愛を描く続編だと説明するのは正確ではありません。ハルを主人公とする冒険物語に、『耳をすませば』からつながる創作の発想が重なっているのです。

出典:日本テレビ『猫の恩返し』原作と月島雫に関する紹介

このつながりは、少し面白いですよね。一つの作品に登場したキャラクターが、別の作品では新しい冒険を支える存在になる。物語を作る少女のイメージまで重ねることで、「あの世界から、こんな物語が広がったのか」と想像できます。

ただし、その想像を楽しむことと、雫の将来について細かな設定が確定していることは別です。「雫が何歳で執筆した」「作家として出版して成功した」といった具体的な後日談まで、この説明から決めつけることはできません。

なぜハルという新しい主人公が必要だったのか

不思議な世界へ一緒に入っていくための人物

原作の誕生を考えるうえでは、バロンだけでなく、ハルがどのように生まれたかも大切です。

日本テレビの紹介によると、柊さんはファンタジーを描くにあたり、読者が気持ちを重ね、物語の世界へ入っていける人物が必要だと考えたそうです。そこで生まれたのが、普通の17歳の女子高生・ハルでした。

出典:日本テレビ『猫の恩返し』ハル誕生の経緯

ここからは、その制作情報を踏まえた考察です。

バロンや猫たちにとって当たり前の世界でも、人間のハルにとっては分からないことばかりです。ハルが驚いたり、戸惑ったりすることで、読者や観客も同じ場所から不思議な出来事を受け止められます。

最初から世界の仕組みを知っている人物だけで話が進むと、見る側が取り残されることもあります。その点、ハルには、私たちと物語の世界をつなぐ役割があると考えられます。

原作名と映画名では、物語への入り口が違って見える

『バロン〜猫の男爵』という題名からは、まずバロンというキャラクターに目が向きます。どんな男爵なのか、どんな活躍をするのか、と気になりますよね。

一方、『猫の恩返し』という題名から想像するのは、猫に何かをして、そのお礼が返ってくる出来事です。こちらは人物名よりも、物語が動き出すきっかけを示す題名として受け取れます。

これは題名を比べたときの解釈であり、制作側が改題の理由として説明したものではありません。ただ、同じ物語に関わる二つの題名でも、読む前、見る前に抱く期待は少し変わるのではないでしょうか。

バロンに会いにいく物語として読むか、ハルに起こる不思議な恩返しとして見るか。入り口を変えるだけでも、注目するところが変わりそうです。

原作を読むときは、映画の設定と分けて楽しみたい

映画から原作漫画に興味を持つと、まず「どこが違うんやろ」と気になるかもしれません。

そのときに大切なのは、漫画で説明されていることを、そのまま映画の確定設定として扱わないことです。原作が同じでも、漫画のコマで伝える物語と、声や音楽、動きで伝える映画では、表現の方法が異なります。

たとえば、ある人物の印象を比べるなら、服装の違いだけでなく、どの場面で登場し、どのような言葉や行動が描かれているかを見ると、比較が具体的になります。世界の仕組みについても、片方にだけ説明があるなら、その説明がどちらの作品に属するものかを確かめたいところです。

「原作にあるから、映画でも必ずそう」という読み方をすると、映像があえて説明していない部分まで、一つの答えに固定してしまうことがあります。

漫画では何が描かれ、映画では何が描かれているのか。それぞれの作品の中で確かめることが、違いを楽しむ出発点になります。

原作を探す際も、映画の場面を漫画として構成したフィルムコミックなどと区別し、著者と作品名を確認すると安心です。今回紹介している原作は、柊あおいさんが描いた『バロン〜猫の男爵』です。

まとめ|『猫の恩返し』はアニメの企画から生まれた漫画を原作にしている

『猫の恩返し』の原作は、柊あおいさんの漫画『バロン〜猫の男爵』です。その漫画は、宮﨑駿さんからアニメの原作を依頼されたことをきっかけに生まれました。

映画では、柊あおいさんが原作、宮﨑駿さんが企画、吉田玲子さんが脚本、森田宏幸さんが監督を担当しています。また、『耳をすませば』との間には、作者やキャラクターのつながりに加え、成長した月島雫が書いた物語という発想があります。

「漫画が先か、映画が先か」という二択だけでは収まりきらない、企画と原作のつながりがある作品です。

誕生の経緯を知ると、バロンの再登場だけでなく、ハルという新しい主人公が置かれた意味にも目が向きます。原作と映画、それぞれの表現で、この不思議な冒険をどう伝えているのか。そこに注目すると、作品を楽しむ入り口がもう一つ増えるのではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました