『ラピュタ』ドーラとは何者?豪快な海賊の母と優しさを考察

『天空の城ラピュタ』のドーラは、最初はパズーとシータを追い回す怖い海賊として登場します。それなのに、物語が進むにつれて、二人にとって頼れる存在になっていくんですね。

ドーラとは何者なのか。どうして、乱暴な言葉の奥に優しさが感じられるのでしょうか。

ドーラは、息子たちや部下を率いる空中海賊の女頭領です。財宝を狙う海賊でありながら、パズーとシータの事情を知ると、二人の行動を支える大人としての顔も見せます。

日本テレビの公式紹介でも、ドーラは空中海賊を率いる「肝っ玉母さん」として紹介されています。強いリーダーと母親という二つの顔が、彼女の人物像を理解する入り口になります。

出典:日本テレビ「2週連続 夏はジブリ!」作品紹介

この記事では、ドーラの立場と行動を整理しながら、厳しさの中にある優しさ、パズーやシータとの関係を考察します。

※ここから『天空の城ラピュタ』の物語の展開と結末に関するネタバレを含みます。

ドーラとは何者?空中海賊を率いる女頭領

ドーラは、飛行船や小型の飛行機械を使って活動する空中海賊のリーダーです。一団は「ドーラ一家」と呼ばれ、息子たちに加えて、部下や船の機械を扱う仲間もいます。

つまり、「一家」といっても、全員が血のつながった家族というわけではありません。家族と仕事仲間が一緒に行動する集団で、その中心にいるのがドーラです。

息子たちが大きな身体で動き回っていても、決定権を握っているのは母親のドーラ。指示を出し、状況を判断し、自分も危険な場所へ飛び込んでいきます。

ドーラの強さは、大声で命令する迫力だけでなく、命令した本人が先頭に立って動くところにもあります。

誰かに危険な役目を押しつけ、安全な場所から眺めている人物ではありません。シータの救出では、自ら飛行機械を操縦し、パズーが手を伸ばせる位置へ近づこうとします。

口調は荒くても、いざというときに頼れる。ドーラ一家の中心にいる理由は、その行動を見れば伝わってきます。

ドーラは最初からパズーたちの味方ではない

ドーラの優しさを考えるとき、忘れたくないのが、最初は飛行石を奪おうとしていたことです。

物語の冒頭で飛行船を襲い、その後もシータを追います。パズーの暮らす町でも、二人の逃走を妨げる側にいます。

この時点のパズーやシータにとって、ドーラ一家は危険な相手です。後から助けてくれたからといって、最初の追跡まで親切だったことにはなりません。

財宝が欲しいという欲もあるし、相手を追い詰める強引さもある。その人物が、事情を知り、二人と行動する中で、別の顔を見せていきます。

ドーラの魅力は、最初から欠点のない優しい大人として描かれていないところにもあるのではないでしょうか。

ドーラがパズーを叱る場面には何がある?

軍に捕らえられたあと、パズーはシータから離れるように言われ、一人で家へ戻ります。そこで待っていたドーラは、彼が置かれた状況を聞き、厳しく責めます。

ここでドーラは、シータがなぜパズーを遠ざけようとしたのか、その行動の意味を彼に突きつけます。

パズーからすれば、シータ本人に離れるように言われたわけです。言葉をそのまま受け取ってしまうのも無理はありません。

しかし、ドーラは、相手の言葉だけでなく、その言葉を口にした状況へ目を向けます。シータは自由に選べる場所にいたのか。パズーを守るために、自分を犠牲にしようとしていたのではないか。

この場面のドーラは、パズーが見落としていたシータの立場を、厳しい言葉で考えさせる役割を担っています。

ただし、ドーラの見立てを、本人の心をすべて読める特別な能力のように扱う必要はありません。軍の動きやパズーの話から、状況を判断していると考えられます。

厳しいだけでなく、動く機会も与えている

ドーラはパズーを叱って終わりにはしません。シータを助けたいと申し出たパズーを連れて、救出へ向かいます。

もちろん、ドーラ自身にも飛行石を手に入れたい目的があります。救出を、完全に無償の善意だけで説明することはできません。

それでも、パズーはドーラと行動することで、シータのもとへ戻る機会を得ます。自分の力だけでは届かなかった場所へ、もう一度向かうことができるんですね。

ここからは考察ですが、ドーラの関わり方には、落ち込んでいる少年を慰めるだけでなく、「それなら、どうするのか」と行動につなげる厳しさがあります。

パズーの代わりにすべてを決めるのではなく、本人が助けたいと望んだことに手を貸す。そこに、ドーラなりの面倒見のよさが見えます。

厳しい言葉がいつでも優しさになるわけではありません。ただ、この場面では、その後に実際の助けがあることが大切です。ドーラはパズーを責めながらも、彼を置き去りにはしないのです。

ドーラの豪快さは、言葉だけでなく身体の動きにも表れる

ドーラを印象づけるのは、食べ方、歩き方、指示の出し方まで含めた勢いです。パズーの家で食事をする場面にも、遠慮なくその場を自分のペースに変えてしまう強さがあります。

さらに救出場面では、危険な飛行をしながら素早く判断します。相手の攻撃を避け、シータに近づき、パズーの動きにも対応しなければなりません。

そうした場面があるため、ドーラの自信は口だけのものには見えません。海賊のリーダーとして、実際に動ける人物だと分かります。

ここからは人物像についての解釈ですが、ドーラには「怖くないから動ける」というより、「危険を分かったうえで判断して動く」強さを感じられます。

豪快な姿に目を奪われますが、その背後には状況を見る冷静さもある。その両方があるからこそ、パズーたちにとって頼れる大人になっていくのでしょう。

ドーラのシータへの接し方に見える、母親としての顔

シータがドーラ一家の飛行船・タイガーモス号に乗り込むと、ドーラは彼女に着替えを用意し、厨房の仕事を任せます。

追いかけていた少女を、今度は船の暮らしへ迎え入れる。その変化が、言葉だけでなく、服や仕事といった具体的なものを通して描かれるんですね。

ただし、シータを特別なお客さんとして扱うわけではありません。船に乗る以上、できる仕事をしてもらうという姿勢です。

ここからは考察ですが、ドーラの接し方には、保護することと、相手の力を認めることの両方があるように見えます。

着るものを用意して面倒を見る一方で、シータにも船の生活を担う役割を渡す。守るだけでなく、仲間として迎える接し方だと受け取れます。

もっとも、シータはまだ子どもであり、危険な海賊船で働く状況をそのまま理想の子育てに置き換えることはできません。あくまで、映画の中でドーラがどのように距離を縮めているかという話です。

シータは、ドーラに守られるだけの存在ではない

船に乗ったシータは、厨房で食事を用意し、パズーとともに見張りも担います。ドーラの指示を受けながら、自分にできることをしていきます。

ドーラは、シータの出自や飛行石の力を必要としています。しかし、一緒に暮らす場面では、シータ自身の手際や行動も見えてきます。

王家の血を引いているから価値がある、という見方だけでは、厨房で働く彼女の姿は捉えきれません。

身分や宝石とは別に、一人の少女として船の生活へ加わっていく。ドーラとの関係を見るときには、この日常の場面も大切だと思います。

ドーラとムスカの違いは、子どもへの関わり方に表れる

ドーラもムスカも、シータと飛行石を追い、ラピュタへ向かおうとします。目的の一部が重なっているからこそ、二人の違いが見えやすくなります。

ムスカは、シータが持つ知識や血筋を、自分の目的を実現するために利用します。彼女が何を望んでいるかより、自分が何を手に入れられるかを優先する人物です。

ドーラにも、財宝を得たいという目的があります。最初の追跡では、シータの気持ちを尊重しているとはいえません。

それでも、行動をともにする段階では、パズーやシータの申し出を聞き、二人に仕事を任せ、協力する関係が生まれます。

ドーラは自分の欲を持ちながらも、二人を仲間として扱う余地がある。ムスカとの違いは、その関係のつくり方にも表れています。

もちろん、これを「海賊だから自由で善良、政府の人間だから悪い」という話に広げる必要はありません。同じものを狙う人物でも、目の前の相手にどう接するかが違うということです。

肩書きだけでは人の優しさは分からない。ドーラの人物像には、そんな見方もできるのではないでしょうか。

最後の再会で見える、ドーラの素直な優しさ

ラピュタから脱出したパズーとシータは、ドーラ一家と再会します。そこでドーラは、戻ってきたシータを抱きしめます。

序盤では追い回していた相手です。それが最後には、生きて帰ってきたことを喜び、身体ごと受け止める相手になっているんですね。

この抱擁からは、飛行石や財宝を巡る利害だけでは説明できない親しさを感じられます。

救出や船での暮らしを通して、一緒に危険をくぐり抜けた少女が大切な存在になった。そう受け取ることのできる場面です。

ドーラの優しさが最も分かりやすく表れるのは、二人が役に立つときだけでなく、無事に戻ってきたことを喜ぶ瞬間なのかもしれません。

普段の強い口調があるから、その抱擁には違った温かさが出ます。いつも穏やかな人ではないけれど、ここでは相手を大切に思う気持ちが、動作として伝わってきます。

優しくなっても、ドーラは海賊のまま

一方で、ドーラ一家は最後まで財宝への関心を失いません。脱出後には、持ち出した宝石を見せる場面もあります。

パズーとシータを大切にするようになったからといって、急に欲のない聖人へ変わったわけではないんです。

ここが、ドーラの人物像を面白くしているところではないでしょうか。お金や宝が欲しいという気持ちと、人の無事を喜ぶ気持ちが、一人の中に同時にあります。

ただし、優しい面があることによって、海賊としての強引な行動まで正当化されるわけではありません。欠点も欲もある人物が、別の場面では温かさを見せる。その両方を残して見ることが大切です。

ドーラの魅力は、厳しさと優しさを行動で確かめられること

ドーラは、優しい言葉をかけ続ける人物ではありません。叱るし、命令するし、自分の都合も押し通します。

しかし、パズーとシータとの関係では、叱ったあとに救出へ向かい、船に迎え入れ、最後には再会を喜びます。

そのため、厳しい言葉だけを切り取ると怖い人に見えても、一連の行動を見れば、二人との距離が変わっていくことが分かります。

ここからは考察ですが、ドーラの温かさは、相手を何でもできるようにしてあげることより、相手が動こうとしたときに力を貸すところにあるのかもしれません。

パズーがシータを助けたいと望めば、一緒に飛ぶ。船に乗った二人には、それぞれ役割を渡す。そして無事に戻れば、喜んで迎える。

厳しい人だから優しいのではなく、厳しさのほかに、実際に助ける行動があるから優しさを感じられる。

ドーラを見るときには、そこを分けて考えたいですね。荒い口調そのものを美化せず、その人が相手のために何をしたかを見ることで、彼女の魅力が伝わってくると思います。

まとめ|ドーラは、欲も情もある頼れる海賊の母

『天空の城ラピュタ』のドーラは、息子たちや部下を率いる空中海賊の女頭領です。最初は飛行石を狙ってパズーとシータを追いますが、やがて二人と協力する関係になります。

豪快な言葉や大胆な行動の一方で、救出に手を貸し、船の暮らしへ迎え入れ、最後にはシータを抱きしめる姿が描かれます。

ドーラの優しさは、欠点や欲がなくなることではなく、それらを持ったまま、目の前の二人を大切にする行動に表れています。

海賊の頭領としての迫力、息子たちの母としての存在感、パズーとシータを支える大人としての温かさ。その複数の顔があるからこそ、ドーラは怖いだけでも優しいだけでもない、印象に残る人物になっているのでしょう。

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