『となりのトトロ』で、サツキとメイが引っ越してきた古い家。暗いところから、真っ黒で小さな生き物がわっと逃げていきます。あれが「まっくろくろすけ」です。
見た目はほこりの塊のようですが、目があって、自分で動いている。では、あの生き物はいったい何なのでしょうか。
まっくろくろすけは、作中でおばあちゃんが「ススワタリ」と呼ぶ、不思議な生き物です。まっくろくろすけとススワタリは、別々の生き物ではありません。
日本テレビの公式作品紹介でも、家に隠れていたまっくろくろすけについて、おばあちゃんからススワタリという名前を教わる流れが紹介されています。
ただし、その名前が分かったからといって、生態のすべてが説明されるわけではありません。どこから生まれるのか、何を食べるのかといったことまで、映画は詳しく語っていません。
この記事では、まっくろくろすけとススワタリの関係、古い家での登場場面、そしてサツキとメイにとってどんな存在だったのかを、作中の描写と考察を分けて紹介します。
※ここから『となりのトトロ』序盤の場面についてネタバレします。
まっくろくろすけの正体は「ススワタリ」
まっくろくろすけは、黒い綿毛のような丸い体に、目がついた生き物です。家の暗がりに集まっていて、人が入ってくると、小さな粒が散るように動きます。
ぱっと見ただけなら、すすやほこりにも見える。でも、こちらをうかがうような目があることで、ただの汚れとは違う存在だと分かります。
この「身近なものに似ているのに、何かが違う」という見た目が、まっくろくろすけの面白さです。恐ろしい怪物の姿ではなく、家の隅にありそうな黒いものが動き出す。そのため、古い家の空気と自然につながっています。
まっくろくろすけとススワタリは同じ存在
名前が二つあるため、「まっくろくろすけとは別に、ススワタリという種類がいるの?」と迷うかもしれません。
けれど、映画では、姉妹がまっくろくろすけと呼んでいる存在を、おばあちゃんがススワタリと呼んでいます。名前が変わったところで、別のキャラクターが登場するわけではありません。
この場面では、「まっくろくろすけ」が姉妹の呼び方、「ススワタリ」がおばあちゃんから教わる名前、と整理すると分かりやすいでしょう。
日本テレビの公式紹介でも、両方の名前が同じ生き物を指す形で説明されています。
確認元:日本テレビ「金曜ロードシネマクラブ」『となりのトトロ』作品紹介
トトロの子どもや仲間なの?
同じ映画に出てくる不思議な生き物なので、トトロとの関係も気になります。ただし、作中では、まっくろくろすけがトトロの子どもだと説明される場面はありません。
小さくて白いトトロとも、見た目や登場の仕方が異なります。まっくろくろすけを「もっと小さいトトロ」と考えるより、トトロとは別の、不思議な存在として受け取るのが自然です。
一方で、物語の中では共通する役割もあります。それは、サツキとメイの暮らす場所に、普通の説明だけでは片づけられないものがいると知らせることです。
いきなり大きなトトロが現れる前に、まず家の暗がりで小さな不思議と出会う。そう考えると、まっくろくろすけは、姉妹がこれから触れていく世界への入り口とも読めます。
まっくろくろすけは、なぜ古い家にいたのか
まっくろくろすけが現れるのは、サツキとメイたちが引っ越してきた家です。新築の明るい部屋ではなく、暗がりがあり、長く使われていなかった気配のある古い家。その場所と、黒い小さな生き物の姿がよく合っています。
日本テレビの公式作品紹介では、ススワタリは留守の家に入り込む生き物として紹介されています。つまり、映画の中では、人の生活がしばらく途絶えていた家にいる存在として理解できます。
ただ、「何年以上空き家にすると現れる」「必ず屋根裏に住む」といった細かな条件まで、決まっているように書くことはできません。映画が見せているのは、姉妹の新しい家に、すでにこの生き物たちがいたということです。
暗がりにいることで、古い家が不思議な場所になる
姉妹にとって、引っ越してきた家は、まだ勝手の分からない場所です。どこにつながっているのか分からない階段や、奥がよく見えない暗い空間がある。家の中を調べること自体が、ちょっとした冒険になっています。
そこで黒いものが一斉に動くと、ただ古いだけだった家に、「何かがいるかもしれない」という気配が生まれます。
この見せ方については、知らない場所への不安と、そこを探検する楽しさを、まっくろくろすけが一緒に引き出していると考えられます。
暗い隅を見て、怖いと思うのも自然です。でも、何がいるのか確かめたくなる気持ちもある。サツキとメイの行動には、その両方が表れています。
怖さがあるから近づけない、というだけで終わらないんよな。分からないものがいることで、家の中をもっと知りたくなる。そんな好奇心が、この場面を動かしているように見えます。
「汚れた家だから出た」だけでは捉えきれない
まっくろくろすけは、すすやほこりを連想させる姿をしています。そのため、古い家の汚れをキャラクターにした存在として受け取ることもできます。
ただし、これは見た目や描写からの解釈です。「汚れが一定量たまると生き物になる」という仕組みが、映画で説明されているわけではありません。
むしろ、まっくろくろすけが動くことで、姉妹には家の暗がりが、ただ掃除をする場所ではなく、何かに出会える場所になっています。
まっくろくろすけは、古い家の暗さやほこりっぽさを、不思議な出会いへと変える存在とも考えられます。
この家に来た姉妹は、人間だけが使う空間に入ったというより、すでに何かが暮らしていた場所へ足を踏み入れたようにも見える。その受け取り方をすると、引っ越しの場面に、少し違う面白さが生まれます。メイがつかまえたまっくろくろすけは、どうなった?
まっくろくろすけとの出会いで、メイの好奇心がよく表れているのが、階段で小さな一匹をつかまえようとする場面です。
メイは、目の前にいる黒い生き物へ手を伸ばし、両手で押さえます。しかし、そのあと手を開いても、まっくろくろすけの姿はありません。代わりに、手のひらが黒くなっています。
作中で確認できるのは、メイがつかまえようとしたことと、手に黒い汚れが残ったことです。そこから先の仕組みは、詳しく説明されていません。
そのため、「握ったので死んでしまった」「必ずすすに変身する」とまで断定するのは避けたいところです。姿が見えなくなったことと、その生き物に何が起きたかは、分けて考える必要があります。
この場面には、不思議なものへ確かに触れたような感覚がある一方で、正体を確かめようとすると分からなくなる面白さがあります。手が黒くなったことで、メイの体験には目に見える跡が残る。でも、生き物そのものを見せることはできません。
つかまえたと思ったのに、手を開いたらいない。「今、そこにおったやん」と言いたくなるような、不思議な距離感なんよな。
おばあちゃんは、なぜススワタリを知っていたのか
サツキとメイが出会ったものについて、名前を教えてくれるのがおばあちゃんです。おばあちゃんは、自分も小さいころにはススワタリが見えたという趣旨の話をします。
ここで大切なのは、姉妹の話を、すぐに見間違いや作り話として片づけないことです。おばあちゃんにとっても、ススワタリは子どものころの体験につながる存在として語られています。
公式作品紹介でも、姉妹がおばあちゃんからススワタリという名前を教わることが確認できます。ただし、おばあちゃんが今も姿を見られるのか、ほかの大人にも見えるのかといった条件までは、その紹介では説明されていません。
確認元:日本テレビ「金曜ロードシネマクラブ」『となりのトトロ』作品紹介
「子どもにしか見えない」と言い切ってよい?
おばあちゃんの話から、ススワタリを見ることと、子ども時代の感覚には関係があると受け取れます。
ただし、「何歳になると見えなくなる」「この条件を満たした人だけが見える」という厳密なルールを、映画が示しているわけではありません。
サツキとメイには見えていて、おばあちゃんも子どものころに見えたと語る。まずは、その描写の範囲で理解するのがよいでしょう。
考察としては、暗がりの小さな気配に目を向けることや、知らないものを確かめようとする好奇心が、ススワタリとの出会いにつながっているようにも見えます。
大人になると、黒いものを見ても、ほこりだと判断して通り過ぎるかもしれません。一方でメイは、そこに目があることや、動いたことを追いかけていく。この違いに、子どもの世界の広さを読み取ることはできます。ただし、それは作品から考えられる解釈であり、公式に説明された生態ではありません。
まっくろくろすけは、なぜ家からいなくなった?
引っ越しの日の夜、家族がお風呂で笑い声を上げる場面のあと、まっくろくろすけたちは家を離れていきます。
この流れは、おばあちゃんが説明する、人が暮らし始めた家からススワタリが去るという話とつながっています。留守の家だった場所に、サツキとメイ、そしてお父さんの生活が始まったのです。
まっくろくろすけがいなくなる場面は、家が「人のいない場所」から「家族が暮らす場所」へ変わったことを示す場面とも受け取れます。
ここで、笑い声を特別な攻撃のように考える必要はありません。映画では、家族の笑い声とススワタリが去る姿が続けて描かれますが、それだけで「笑い声に触れると消滅する」という能力の設定にはなりません。
また、彼らが家を出たあと、具体的にどこを新しい住みかにしたのかも、詳しく説明されていません。別の空き家へ向かったのか、森のどこかに落ち着いたのか。そこは想像の余地が残っています。
怖かった家に、家族の声が響くようになる
この場面を家族の側から見ると、変化が分かりやすくなります。昼間には、姉妹が知らない部屋を探り、暗がりに驚いていました。夜には、お父さんと一緒にお風呂に入り、声を出して笑っています。
家の古さがなくなったわけではありません。それでも、家族で過ごす時間が生まれたことで、場所の受け止め方は変わっています。
知らない家は、最初から安心できる場所とは限らない。そこで話したり、笑ったり、毎日の暮らしを重ねたりして、少しずつ自分たちの家になっていく。まっくろくろすけの退場は、そんな変化に重ねて読むこともできます。
家の見た目だけやなく、そこで誰とどう過ごすかによって、居心地は変わるんちゃうかな。古い家での小さな出来事ですが、暮らしと居場所について考えられる場面です。
まとめ|まっくろくろすけは、古い家で出会う小さな不思議
『となりのトトロ』のまっくろくろすけは、おばあちゃんがススワタリと呼ぶ生き物です。黒い綿毛のような姿で家の暗がりに現れ、サツキとメイが新しい暮らしの中で最初に出会う、不思議な存在になっています。
メイがつかまえようとすると手に黒い跡が残り、家族の生活が始まると家を去っていく。ただし、誕生の仕組みや細かな生態、去ったあとの住みかまでが明かされるわけではありません。
まっくろくろすけの魅力は、身近なすすやほこりを思わせながら、最後まで説明しきれない生き物であることにもあります。
名前を教わっても、不思議が全部なくなるわけではない。古い家の隅に、まだ知らない何かがいるかもしれない。そんな余白を残したまま、姉妹の暮らしはトトロのいる世界へと広がっていきます。

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