『となりのトトロ』のポスターで、トトロの隣に傘を差して立っている女の子。「サツキかな? でも髪型はメイに似ているような……」と、不思議に思ったことはないでしょうか。
結論からいうと、あの女の子は、本編のサツキやメイをそのまま描いた人物ではなく、二人の特徴を一人に集約して描かれたポスターの少女です。
金曜ロードショーの公式アカウントは、サツキとメイを二人とも配置する案を検討したものの、デザインがうまくまとまらず、一人の女の子に二人の特徴をまとめたと説明しています。
つまり、「映画に出てこない第三の姉妹がいる」という話ではありません。ポスターと本編で女の子の姿が違うのには、絵を作るうえでの事情があったんですね。
この記事では、雨のバス停にトトロと女の子が並ぶポスターについて、少女の正体、サツキ・メイとの見た目の違い、初期設定との関係を整理します。物語の結末には触れません。
『となりのトトロ』ポスターの女の子は誰?
サツキとメイの特徴を合わせた女の子
女の子の正体を考えるとき、手がかりになるのが、金曜ロードショー公式アカウントによる2022年8月19日の解説です。
そこでは、ポスターにもトトロの隣にサツキとメイを並べる構図が検討されたこと、その構図ではデザインがうまくいかなかったため、二人の特徴を一人の女の子に集めたことが紹介されています。
出典:金曜ロードショー公式アカウントによるポスタービジュアルの解説
この説明を踏まえると、「サツキにも見えるし、メイにも見える」という印象は、どちらかを見間違えているわけではありません。そもそも二人の特徴が一枚の絵に込められているのです。
ただし、公式の説明は、髪型や服装の各部分について「ここはサツキ、ここはメイ」と細かく指定したものではありません。見た目を比べた印象と、確認できる制作情報は分けておく必要があります。
本編に登場する「もう一人の姉妹」ではない
ポスターだけを見ると、映画のどこかにこの女の子が登場しそうにも思えます。しかし、ポスターの少女を、サツキとメイとは別に暮らしている登場人物として受け取る必要はありません。
本編で物語の中心になるのは、姉のサツキと妹のメイです。ポスターの少女については、二人の特徴をまとめた宣伝用のビジュアルとして説明されています。
ここが少しややこしいところなんよな。映画の顔になっている絵なのに、そこに立つ女の子が、本編の二人のどちらともぴったり一致しない。でも制作の経緯を知ると、その違いにも納得できます。
ポスターは、本編の一場面をそのまま切り取るとは限りません。登場人物や雰囲気を、一枚の絵でどう伝えるか。そのために、本編とは異なる見せ方が選ばれることもあるわけです。
ポスターの女の子とサツキ・メイはどこが違う?
見比べるときは、髪型だけでなく、服装や体格、バス停での立ち方にも注目すると違いが分かりやすくなります。
| 比べる部分 | ポスターの女の子 | 本編のサツキ・メイ |
|---|---|---|
| 髪型 | 左右で結んだ髪が目立つ | サツキは短い髪、メイは左右で結んだ髪 |
| 服装 | 黄色系の上着と赤みのあるスカート | バス停のサツキの服装に近い印象 |
| 人物の配置 | 女の子一人がトトロの隣に立つ | サツキがメイを背負っている |
| 物語上の位置づけ | 二人の特徴をまとめたポスターの少女 | それぞれ別の人物として登場する姉妹 |
髪型はメイを、服装はサツキを連想させる
ポスターの女の子をメイだと思いやすい理由の一つは、左右で結んだ髪です。本編のメイにも通じる特徴なので、顔の周りだけを見ると、メイを連想しやすいでしょう。
一方で、黄色系の上着と赤みのあるスカート、傘を差してバス停に立つ姿は、本編のサツキの姿に近い印象があります。
つまり、髪型に注目するとメイらしく、服装や立ち姿に注目するとサツキらしく見える。そのため、どちらか一人として説明しようとすると、しっくりこない部分が出てきます。
ただし、これは絵を比較して分かる見た目の話です。「メイが成長してサツキの服を着ている」といった時間の経過を示す設定が、公式のポスター解説で語られているわけではありません。
本編のバス停では、サツキがメイを背負っている
もう一つの大きな違いが、女の子の人数です。
本編では、父親の帰りを待つサツキが、眠ったメイを背負っています。その隣にトトロが現れるため、場面にいる姉妹は二人です。
ところがポスターには、傘を差した女の子が一人だけ立っています。雨、バス停、トトロという共通点があるので同じ絵に思えますが、人物の配置は本編と異なります。
本編の場面写真は、スタジオジブリ公式『となりのトトロ』作品ページでも確認できます。
本編には、妹を背負って待つお姉ちゃんの姿がある。一方のポスターでは、女の子と大きなトトロが隣り合っている。その違いに注目すると、ポスターは場面の再現だけを目的にした絵ではない、と捉えやすくなります。
では、そもそも『となりのトトロ』には、主人公の女の子が一人だった時期があったのでしょうか。ここからは、ポスターの話と混同しやすい「初期設定」を整理します。『となりのトトロ』は最初、女の子一人の設定だった
出発点にあったのは、バス停で不思議な存在と出会う光景
ポスターの少女を理解するうえで、もう一つ知っておきたいのが、主人公の初期設定です。
金曜ロードショー公式アカウントは、宮﨑駿監督が最初に思いついた光景として、バスを待っているところへオバケがやってくる場面を紹介しています。その段階では、主人公の女の子は一人だったと説明されています。
つまり、最初から現在のサツキとメイが、完成した姿でそろっていたわけではありません。一人の女の子と不思議な生き物との出会いから、姉妹のいる物語へと形が変わっていったのです。
本編を知っていると、サツキとメイは二人で一組のように感じられます。でも、作品が生まれる過程では、その当たり前もまだ決まっていなかったんですね。
一人から姉妹への変更と、ポスターの構図は別の段階の話
ここで混同しやすいのが、「初期設定では女の子が一人だったこと」と、「完成したポスターに女の子が一人描かれていること」です。
公式アカウントの説明では、女の子が姉妹になった後、ポスターでも二人をトトロの隣に配置する案が検討されています。そのうえで、二人の特徴を一人に集約した構図になったとされています。
そのため、「姉妹になる前の絵が、変更されずにそのまま残った」とだけ説明すると、ポスターを制作した際の検討が抜け落ちてしまいます。
整理すると、初期の主人公は一人、その後にサツキとメイという姉妹へ変更、ポスターでは二人を配置する案も検討したものの、一人に特徴をまとめた、という流れです。
同じ「女の子一人」でも、初期の物語設定と、ポスターの最終的なデザインでは意味が違う。この順番を押さえると、少女の正体を捉えやすくなります。
ポスターの少女は、成長したメイや母親なの?
見た目の印象と、人物の設定は分けて考える
左右で結んだ髪と、メイより大きく見える体格から、「少し成長したメイなのでは?」と想像することはできます。
しかし、今回確認した公式の解説では、この少女を成長したメイや、子ども時代の母親として説明していません。紹介されているのは、サツキとメイの特徴をまとめたという制作上の経緯です。
見た目が似ていることは、人物を想像するきっかけにはなります。ただ、それだけで映画の未来や過去を描いた絵だとは断定できません。
「大きくなったメイにも見えるな」という楽しみ方と、「成長したメイを描いた公式設定である」という説明は、分けておきたいところです。
「サツキでもメイでもない」は、二人と無関係という意味ではない
この少女について、「サツキでもメイでもない」と聞くと、まったく別の人物が隠されているように感じるかもしれません。
けれども、制作の説明に沿えば、二人とは深く関係しています。どちらか一人の姿をそのまま使う代わりに、姉妹それぞれの特徴を一人に込めているからです。
その意味では、「本編のどちらか一人ではないけれど、二人の特徴を受け継いだ女の子」と捉えると分かりやすいでしょう。
正体不明の登場人物を探す話だと思っていたら、作品を一枚の絵にする工夫の話だった。そこに、このポスターならではの面白さがあります。
女の子一人の構図から、どんな印象を受ける?
ここからは制作情報ではなく、絵の見え方についての考察です。
ポスターでは、小さな女の子と大きなトトロが、同じバス停に並んでいます。体の大きさも姿もまるで違うのに、どちらもそこで何かを待っているように見える。その並び方に、不思議な親しみを感じることができます。
オバケと聞けば、逃げたり怖がったりする場面を想像しそうです。ところが、この絵には、異なる存在が隣り合っている静けさがあるんですね。
女の子が一人なので、見る側の意識も、その子とトトロの関係に向かいやすくなります。「この二人は知り合いなのか」「女の子は怖くないのか」。説明を読まなくても、小さな疑問が生まれる構図です。
一方、本編のバス停には、妹を背負って父親を待つサツキの事情があります。同じ雨のバス停でも、姉妹の日常が描かれる場面と、不思議な出会いを一目で伝えるポスターとでは、受け取る印象が変わります。
本編との違いに気づくことで、ポスターが作品のどんな魅力を伝えているかにも目を向けられるのではないでしょうか。
全部を説明していないからこそ、「この世界をちょっとのぞいてみたい」と思える。女の子の正体が分かった後も、その不思議さは残るんよな。
まとめ|ポスターの女の子は、サツキとメイの特徴を集めた少女
『となりのトトロ』の雨のバス停のポスターに描かれた女の子は、本編のサツキやメイをそのまま描いた人物ではありません。金曜ロードショー公式の解説では、二人を配置する案を検討した後、姉妹の特徴を一人に集約して制作したと説明されています。
髪型はメイを、服装や立ち姿はサツキを連想させますが、成長したメイや別の姉妹という設定を示すものではありません。また、初期の主人公が一人だったことと、ポスターで一人にまとめられたことは、段階を分けて理解するのが大切です。
誰なのかが分かると、今度は「二人の特徴が、一人の女の子にどう込められているんやろ」と見比べたくなる。見慣れたポスターにも、そんな楽しみ方が残されています。

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