『風立ちぬ』音楽の楽器は?「旅路」とサウンドトラックを紹介

『風立ちぬ』の音楽で、弦をはじくように響く、少し懐かしい音。「ギターかな?」「マンドリンに似ているけれど、何の楽器?」と気になった方もいるのではないでしょうか。

最初に答えると、「旅路(夢中飛行)」の音色を知るうえで注目したいのは、ロシアの弦楽器・バラライカです。楽譜出版社の曲紹介でも、バラライカやアコーディオンの響きが特徴として挙げられています。

ただし、『風立ちぬ』の音楽すべてが、一つの楽器だけで演奏されているわけではありません。また、サウンドトラックの原曲と、ピアノやマンドリン向けに編曲された演奏も、分けて考える必要があります。

この記事では、「旅路」の特徴的な楽器、演奏者による紹介、サウンドトラックに収録された曲を整理します。音楽を中心に扱うため、物語の結末の詳しい説明はしません。

「旅路(夢中飛行)」の特徴的な楽器はバラライカ

「旅路(夢中飛行)」は、久石譲が作曲した『風立ちぬ』の劇中曲です。サウンドトラックでは、最初の曲として収録されています。

楽譜出版社ミュージックエイトの紹介では、この曲の特徴として、バラライカやアコーディオンの音色が説明されています。

出典:ミュージックエイト「旅路(夢中飛行)」楽曲紹介

また、本編のレコーディングに参加した演奏家・青山忠は、自身の演奏動画で「旅路(夢中飛行)」を取り上げ、バラライカを演奏しています。

出典:Aoyama Mandolin Channel「本人演奏!『風立ちぬ』より“旅路(夢中飛行)”」

音だけを聴いて「ギターに似ている」と感じても、不自然ではありません。バラライカも、弦をはじいて音を出す楽器だからです。

ただ、似た音に聞こえることと、同じ楽器であることは別です。「旅路」の楽器が気になったときは、まずバラライカという名前を押さえると、演奏映像や楽曲の紹介を探しやすくなります。

バラライカは、弦をはじいて演奏するロシアの楽器

バラライカは、三角形の胴を持つことで知られるロシアの弦楽器です。ギターやマンドリンと同じく、弦をはじくことで音を出します。

楽器に詳しくなくても、「弦をはじく音」と「長く伸びる音」を分けて耳を向けると、曲の中の役割を捉えやすくなります。

弦をはじいた音には、一音ずつ輪郭が立つ感触があります。その音が連なって旋律になることで、歌声がなくても、誰かが語っているような親しみやすさを感じられるかもしれません。

これは音色の受け取り方についての説明です。懐かしいと感じるか、軽やかと感じるか、少し寂しく感じるかは、聴く人によっても変わります。

マンドリンの演奏を見つけても、映画の編成とは分けて考える

「旅路」を調べると、マンドリン、ギター、ピアノなど、さまざまな楽器による演奏が見つかります。

そのため、「マンドリンで演奏されている動画があるから、映画もマンドリンだけで演奏している」と判断しないようにしたいところです。

青山忠による演奏動画も、紹介文ではバラライカとマンドリンの二重奏版と明記されています。バラライカを青山忠、マンドリンを青山涼が担当する演奏です。

本編の録音に参加した演奏者の動画であっても、その動画の編成が映画の録音と同じとは限りません。ここは少しややこしいですが、大切な区別です。

聴くもの確認したい点
映画本編の音楽映画のために録音された音楽
オリジナル・サウンドトラック映画の音楽を収録したアルバム
二重奏・独奏・合奏の動画その演奏用に編曲されている可能性がある
市販の楽譜原曲の楽器ではなく、演奏用の編成が書かれている場合がある

たとえば、学校の器楽合奏向けの楽譜にリコーダーや木琴が含まれていても、それだけで映画の録音にも同じ楽器が使われたとは言えません。

「曲を知りたい」のか、「映画で鳴っている楽器を知りたい」のかで、確認する情報が変わるんですね。

バヤンやギターを使った『風立ちぬ』の組曲もある

『風立ちぬ』の音楽については、バラライカに加えて、バヤンやギターという楽器名を見かけることもあります。

ユニバーサル ミュージックの公式公演紹介には、久石譲の作品として、「バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための『風立ちぬ』第2組曲」が掲載されています。

出典:ユニバーサル ミュージック「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」公演紹介

バヤンは、ロシアのボタン式アコーディオンの一種です。弦をはじくバラライカとは、音を出す仕組みが違います。

ただし、この公式情報が示しているのは、コンサート用の組曲の編成です。これを根拠に、サウンドトラックの全曲で同じ楽器が同じように使われていると断定することはできません。

映画の一場面に寄り添う音楽と、演奏会でまとまった作品として聴く組曲。同じ『風立ちぬ』の音楽でも、聴く形によって編成や構成に違いがある点を押さえておきましょう。

サウンドトラックでは「旅路」が複数の曲として収録されている

『風立ちぬ サウンドトラック』は、2013年7月17日に発売されました。徳間ジャパンの公式商品情報では、音楽は久石譲、演奏は読売日本交響楽団と記載されています。

出典:徳間ジャパン『風立ちぬ サウンドトラック』

収録曲を見ると、「旅路」は一曲だけの名前ではありません。「旅路(夢中飛行)」「旅路(決意)」「旅路(初出社)」など、括弧の中の言葉が異なる曲が並びます。

そのため、「映画で聴いた旅路をもう一度聴きたい」と思ったら、「旅路」だけでなく、括弧の中まで含めた曲名を確認するのがおすすめです。

同じ名前を持つ曲を順に聴いて、どんな音が前に出るのか、速さや響きがどう違って感じられるのかに耳を向ける。楽器の知識がなくても、そういう聴き方なら入りやすいんちゃうかな。「旅路」を聴きたいときは、どの曲を選べばいい?

『風立ちぬ』の音楽を探しているなら、最初の入口として分かりやすいのは、サウンドトラックの1曲目に収録された「旅路(夢中飛行)」です。

そこから別の「旅路」へ進むと、同じ題名を持つ音楽が、作品の中でどのように広がっているのかをたどれます。

徳間ジャパンの公式収録曲一覧には、次のような曲が掲載されています。

曲名収録順
旅路(夢中飛行)1曲目
旅路(決意)4曲目
旅路(初出社)11曲目
旅路(軽井沢の出会い)17曲目
旅路(結婚)28曲目
旅路(夢の王国)31曲目

出典:徳間ジャパン『風立ちぬ サウンドトラック』収録曲一覧

これは「旅路」と名のつく曲の一部です。すべてを同じ録音の繰り返しだと考えず、曲名ごとに聴き分けると楽しみが広がります。

まず「夢中飛行」と「決意」を続けて聴き、旋律の似ているところや、響きの違いを探してみる。そのくらいの入り方なら、音楽の専門知識がなくても取り組みやすいでしょう。

楽器名だけでなく、音の出だしと伸び方に耳を向ける

楽器を聴き分けようとすると、「これは何の音?」という名前当てに集中しがちです。ただ、最初からすべてを特定する必要はありません。

前半で紹介したバラライカなら、弦をはじいた瞬間の輪郭に注目する。一方、アコーディオン系の楽器では、息を送るように音が続く感触に耳を向ける。そうすると、異なる音が重なっていることを捉えやすくなります。

演奏動画を見る場合は、どちらの奏者が旋律を弾き、もう一方がどんな音を添えているのかを見てから、もう一度音だけで聴く方法もあります。

楽器の名前を知ることは、音楽を理解するための入口です。その音がどう鳴っているかを楽しむところまで進むと、曲の印象も少し変わります。

「旅路」と主題歌「ひこうき雲」は別の曲

『風立ちぬ』の音楽を調べると、「旅路」と「ひこうき雲」の両方が出てきます。この二つは、作り手も役割も異なる曲です。

「旅路」は久石譲による劇中曲、「ひこうき雲」は荒井由実が作詞・作曲・歌を担当した主題歌です。

ディズニー公式の作品情報でも、映画の音楽は久石譲、主題歌は荒井由実の「ひこうき雲」と分けて記載されています。

出典:ディズニー公式『風立ちぬ』音楽・主題歌情報

2013年発売のサウンドトラックCDには、劇中曲とともに、32曲目として荒井由実が歌う「ひこうき雲」も収録されています。

そのため、アルバムに久石譲の名前が大きく表示されていても、収録されたすべての曲を久石譲が作曲したという意味ではありません。

歌声のある主題歌を探しているなら「ひこうき雲」、特徴的な弦の音が響く劇中曲を探しているなら、まず「旅路(夢中飛行)」を確認すると分かりやすいでしょう。

原曲の音色を知るなら、サウンドトラックから聴く

「映画で聴いた、あの音をもう一度確かめたい」という目的なら、最初にオリジナル・サウンドトラックを選ぶと、別の編曲版との混同を避けやすくなります。

作品名と曲名が同じでも、ピアノ独奏、ギター独奏、吹奏楽、マンドリン合奏では、使われる楽器も響き方も変わります。

これは、どちらが正しいという話ではありません。映画の音楽を別の楽器で演奏するために、旋律や伴奏を組み直しているのです。

バラライカの音色に興味を持ったなら、サウンドトラックを入口に演奏者の動画へ進む。自分で弾いてみたいなら、手持ちの楽器に合う編曲譜を探す。目的に合わせて選ぶと、知りたかった音へ近づけます。

なお、個々の「旅路」で鳴る全楽器を調べたい場合は、録音のクレジットや該当するスコアの確認が必要です。音が似ているという理由だけで、細かい編成まで断定しないようにしたいところです。

「旅路」という名前から、二郎の歩みを考える

ここからは曲名と映画を合わせた考察です。

収録曲には「初出社」「軽井沢の出会い」「結婚」など、仕事と人との関係の両方に結びつく名前が並んでいます。

この並びを見ると、「旅路」は遠い場所への移動だけでなく、二郎が経験していく人生の道のりとしても受け取れます。

飛行機をつくる夢へ進む時間も、誰かと出会って関係を築く時間も、一人の人生の中にある。曲名をたどるだけでも、その広がりが見えてくるのです。

ただし、これは曲名から読み取れる解釈であり、作曲者の意図を断定するものではありません。

仕事の場面と人との出会いで、音楽がどう違って感じられるのか。同じ「旅路」を聴き比べると、言葉で説明される気持ちとは別のところに、人物の歩みを感じられるかもしれません。

「何の楽器やろ?」から入って、気づけば二郎の時間をたどっている。映画音楽には、そんな楽しみ方もあるんですよね。

まとめ|「旅路」の音色を知る入口はバラライカ

『風立ちぬ』の「旅路(夢中飛行)」で特徴的な楽器を知りたいなら、まず注目したいのはバラライカです。楽譜出版社の紹介では、バラライカやアコーディオンの音色が、この曲の特徴として説明されています。

ただし、映画全体の音楽や、複数ある「旅路」を、一つの楽器だけで説明することはできません。演奏動画や市販楽譜には、それぞれの編成に合わせた編曲版もあります。

映画の音色を確かめるならオリジナル・サウンドトラック、楽器の姿や弾き方を知るなら演奏者の動画。この二つを行き来すると、「旅路」をより楽しめます。

楽器名が分かったら、次は音の重なりにも耳を向けてみてください。曲名とともに聴き進めることで、映像を見ているときとは違う形で、『風立ちぬ』の世界に触れられるでしょう。

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