『風の谷のナウシカ』の終盤で、「さっきまでピンク色だった服が、いつの間にか青くなっている」と気になった方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、ナウシカの服がピンク色から青色へ変わるのは、傷ついた王蟲の子を助ける際に、王蟲の青い血(体液)で染まるためです。
終盤で青い服に着替え直したわけではありません。また、ナウシカ自身の血で染まったわけでもなく、王蟲の子との接触によって服の色が変わっています。
ただ、この変化には物語上の意味もあります。王蟲を助けようとした結果、ナウシカの姿が、風の谷に伝わる「青き衣」の言い伝えと重なっていくのです。
この記事では、映画版を中心に、服の色が変わる順番、王蟲の血との関係、そして「青き衣」が結末で持つ意味を整理します。
※ここから映画『風の谷のナウシカ』の終盤・結末までネタバレします。
ナウシカの服は「青→ピンク→青」と変わる
服の色の変化を理解するには、途中の着替えと、終盤で服が染まる出来事を分けると分かりやすくなります。
| 場面 | 服の色 | 変化の理由 |
|---|---|---|
| 物語の序盤 | 青色 | もともと着ている服 |
| ペジテの飛行船から脱出するとき | ピンク色・赤みのある色 | 脱出を助ける少女と服を交換する |
| 王蟲の子を助けた後 | 青色 | 王蟲の青い血で服が染まる |
最初の青からピンクへの変化は、服そのものを交換したためです。一方、ピンクから青への変化は、同じ服が王蟲の血で染まったため。この二つは別の出来事なんですね。
もともとナウシカには青い服の印象があるため、終盤で青くなっても、いつもの服へ戻ったように見えるかもしれません。しかし、最後に身に着けている青い衣は、王蟲の子を助ける行動の中で生まれたものです。
色だけ見ると元に戻っていますが、その青が生まれた理由は違う。ここを押さえると、ラストの姿の受け取り方も変わってきます。
途中でピンク色の服になるのは、ペジテの飛行船から脱出するため
ナウシカは、ペジテ側の人々が王蟲を利用して風の谷を襲わせようとしていることを知ります。谷へ知らせようとしますが、自由に行動できなくなってしまいます。
そのナウシカを助けるのが、ラステルの母とペジテの少女たちです。少女の一人が服を交換して身代わりになることで、ナウシカが脱出できるようにします。
このとき着るのが、ピンク色、あるいは赤みのある色に見える服です。映像の明暗などで色の呼び方に多少の違いはありますが、序盤の青い服とは明らかに異なります。
つまり、この段階で服が変わるのは、王蟲や不思議な力の影響ではありません。ナウシカを逃がすための協力による着替えです。
ここには、ペジテの人々をひとまとめにできないという点もあります。風の谷を犠牲にしようとする計画がある一方で、その計画に従うだけではなく、ナウシカを助けようとする人もいる。
同じ側にいるからといって、全員が同じ考えとは限らないんよな。ナウシカが終盤で着る服には、王蟲を助けた出来事だけでなく、彼女を送り出した人たちの協力もつながっています。
ピンクの服が青くなるのは、王蟲の子の血で染まるから
飛行船を脱出したナウシカは、傷つけられた王蟲の子が、王蟲の群れを誘導するために利用されていることを知ります。
王蟲の子は、群れを怒らせ、風の谷へ向かわせるためのおとりにされています。ナウシカはその子を助け、さらに酸の湖へ進もうとするのを体を張って止めます。
この接触の中で、王蟲の子の傷から出る青い血がナウシカの服に付着し、服が青く染まります。
色が変わる理由について、映画は説明のために長く立ち止まりません。王蟲の子の動きやナウシカの負傷にも目が向く場面なので、服の変化を見落としても不思議ではありません。
しかし、場面の流れを追うと、ピンク色の服を着たナウシカが王蟲の子に触れ、その後は青い衣を身に着けていることが分かります。
ここで混同しやすいのが、ナウシカ自身もけがをしていることです。ただ、服を青く染めたのはナウシカの血ではなく、王蟲の血です。
また、酸の湖による化学反応で服が青く変色した、という説明でもありません。作品の中で示されている原因は、王蟲の青い血です。現実の染料のような仕組みまで、作中で説明されているわけではありません。
映画の場面整理は、映画スクエアのナウシカ紹介でも確認できます。作品の基本情報については、スタジオジブリ公式『風の谷のナウシカ』作品ページを参照してください。
青い服は、王蟲を助けようとした結果として生まれる
服が青くなることの意味を考えるうえで、大切なのは行動の順番です。
ナウシカは「青き衣」の人物になるために、服を青く染めようとしたわけではありません。目の前で傷つけられている王蟲の子を助けようとして、その結果、衣が青くなっています。
言い伝えに自分を合わせる行動ではなく、命を守ろうとする行動が、後から言い伝えの姿と重なる。そう読むことができます。
風の谷を救うことだけを考えるなら、王蟲の子を群れの誘導に使う人間たちと同じく、その子を手段として見る可能性もあります。しかしナウシカは、傷ついた子そのものを助けようとします。
群れの怒りを止めたいことと、目の前の命を守りたいこと。その両方がつながっているからこそ、青く染まった服は、人間と王蟲の関係を考える手がかりにもなるんですね。
「青き衣」と「金色の野」は、ラストでどう重なる?
風の谷には、青い衣をまとった人物が金色の野に降り立ち、失われた大地との絆を結ぶという言い伝えがあります。
映画の終盤では、王蟲の群れに突き飛ばされたナウシカを、王蟲たちが金色に輝く触手で持ち上げます。やがて意識を取り戻したナウシカが、その触手の上を歩く姿が描かれます。
このとき、王蟲の血で染まった服が「青き衣」に、無数の金色の触手が「金色の野」に重なります。
金色の野とは、ここでは実際の麦畑や草原ではありません。王蟲たちの触手が広がる光景を、言い伝えの野に重ねているんですね。
場面と言い伝えの対応は、映画スクエアの「タペストリー、伝説」の解説でも確認できます。
大ババは、その場にいる子供から様子を聞き、ナウシカの姿と言い伝えが重なったことを悟ります。服の色が変わる描写は、この結末につながる大切な出来事だったわけです。
ただし、ここから「ナウシカは最初から運命に選ばれていた」とまで断定する必要はありません。映画で描かれているのは、彼女の行動の結果として、言い伝えを思わせる光景が現れることです。
序盤も青い服なのに、なぜ最後の「青き衣」が特別なのか
ここで、「ナウシカは最初から青い服を着ていたのに、どうして最後だけ特別なの?」という疑問が出てきます。
確かに、青い服という条件だけなら序盤から当てはまります。しかし、言い伝えには金色の野や、大地との絆という要素もあります。服が青いだけで、言い伝えのすべてが成立するわけではありません。
終盤では、青い衣、金色の触手、王蟲の怒りが静まった状況が、一つの場面に集まります。そこで初めて、ナウシカの姿が言い伝え全体と重なるのです。
さらに考察として重要なのは、最後の青が王蟲の血によって生まれていることです。
人間が傷つけ、道具として利用していた王蟲の子。その子を助けようとしたナウシカの服に、王蟲の血が染み込む。そして最後には、王蟲たちがナウシカを支える。
青き衣を、人間と王蟲が再び関わり合うことの象徴として読むと、ラストの光景にもつながりが見えてきます。
これは作者の意図を断定する説明ではなく、場面の連なりから考えられる解釈です。青い色そのものよりも、その色が生まれた経緯に意味がある、と受け取れるんですね。
服が青いから王蟲を止められた、とは限らない
「青き衣」が印象的なため、服の色に特別な力があり、それによって王蟲の群れを止めたように感じるかもしれません。
しかし、映画版では、青い服を着るだけで王蟲を鎮められるという仕組みは説明されていません。
ナウシカは王蟲の子を助け、群れへ返そうとします。それでも、突進してくる群れの前に立った彼女は、すぐ安全に受け入れられるわけではありません。王蟲たちに突き飛ばされ、その後、群れが静まり、触手で持ち上げられます。
この流れを踏まえると、青い服だけを群れが止まった原因とするのは、映画の描写を単純化しすぎてしまいます。
むしろ、王蟲の子を利用する行為と、その子を守ろうとする行為の違いが大切なのではないでしょうか。同じ王蟲を相手にしていても、接し方はまったく違います。
自分たちの目的のために傷つけるのか、傷ついている命を助けるのか。ナウシカの青い衣は、その後者の行動が残したものとして見ることができます。
ただ、「優しくすれば必ず分かり合える」という簡単な話にもできません。ナウシカ自身が大きな危険にさらされているからです。ラストの美しさには、その前に起きた傷や犠牲も含まれているんよな。
映画版と原作漫画では、服を手に入れる経緯が違う
服の色について調べる際には、映画版と原作漫画の設定を混ぜないことも大切です。
映画版では、ペジテの飛行船から脱出するため、少女と服を交換します。一方、原作漫画では土鬼の女性から衣を受け取る展開があり、同じ経緯ではありません。
王蟲の血によって衣が青く染まるという要素は共通していますが、誰から、どのような状況で受け取った衣なのかは異なります。
原作をもとにした新作歌舞伎の衣裳解説でも、女性からもらう衣と、王蟲の血を浴びた後の衣裳の色が区別されています。詳しくは、松竹「歌舞伎美人」の『風の谷のナウシカ』衣裳解説を参照できます。ただし、そこでの色名やデザインは歌舞伎版の説明です。
映画を見て「服が変わった理由」を知りたい場合は、まず映画の場面の順番で理解するのが分かりやすいでしょう。原作の設定を補足する場合も、映画とは別の描写として扱う必要があります。
まとめ|服が青くなる理由を知ると、ラストのつながりが見える
映画『風の谷のナウシカ』では、服の色は大きく「青→ピンク→青」と変化します。
青からピンクへの変化は、ペジテの飛行船から脱出するために少女と服を交換したからです。ピンクから青への変化は、傷ついた王蟲の子を助ける際、その青い血で衣が染まったからです。
そしてラストでは、青く染まった衣と王蟲の金色の触手が、風の谷に伝わる言い伝えの姿と重なります。
最後の「青き衣」は、王蟲の子を助けようとした行動によって生まれたもの。その経緯が、ナウシカと王蟲の関係をラストへつないでいます。
服の色に目を向けると、脱出を助けた人たち、傷ついた王蟲の子、そしてナウシカを支える王蟲の群れまで、一つの流れとして見えてきます。小さく見える色の変化が、結末を理解する大きな手がかりになっているんですね。

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