『魔女の宅急便』ウルスラとは何者?絵描きの少女とキキの関係

『魔女の宅急便』に登場する、森の小屋で絵を描いている少女。キキとは違う落ち着きがあって、「この人は何者なんだろう」と気になった人もいるのではないでしょうか。

ウルスラは、森の丸太小屋で絵を描く18歳の少女です。キキとは配達中の出来事をきっかけに知り合い、やがて、飛べなくなったキキが悩みを話せる年上の友人になります。

ただ、ウルスラの役割は、困っているキキに助言することだけではありません。自分も絵を描くことに悩んだ経験を話すからこそ、キキは、得意なことができなくなる苦しさを一人で抱えずに済むようになります。

この記事では、1989年公開のアニメ映画におけるウルスラの人物像と、キキとの出会い、二人の関係を整理します。そのうえで、ウルスラがキキにとってどんな存在なのかを考えていきます。

※ここから『魔女の宅急便』の物語の展開に触れます。

『魔女の宅急便』ウルスラとは?森で絵を描く18歳の少女

ウルスラは、森にある丸太小屋で制作に取り組む絵描きです。カラスを描いたり、大きな絵に向き合ったりする姿が登場します。

日本テレビの金曜ロードショー公式記事では、キキは13歳、ウルスラは18歳と紹介されています。二人の年齢差は5歳。ウルスラはキキより少し先を歩いている少女なのです。

年齢と制作上の位置づけは、金曜ロードショー公式の『魔女の宅急便』解説で確認できます。

ウルスラは、キキの母親でも、修業を管理する先生でもありません。キキに仕事を与える立場でもなく、町での暮らし方を細かく教えるわけでもありません。

それでも、キキが自分の力を信じられなくなったときには、話を聞いてくれる。その距離感が、ウルスラという人物を考えるうえで大切です。

年上の人に相談すると、どうしても「こうしなさい」と答えを決められることがあります。でも、ウルスラは自分の経験を話しながら、キキが考える余地を残しています。

そのため、二人の関係は姉のような親しさを持つ、対等な友人関係として受け取れます。ウルスラのほうが経験は豊かでも、キキを一方的に教えられるだけの存在にはしていないのです。

ウルスラの声優はキキと同じ高山みなみ

ウルスラとキキの声を担当しているのは、どちらも高山みなみさんです。ディズニー公式の作品紹介でも、「キキ/ウルスラ」として掲載されています。

キキの声には、緊張や戸惑い、背伸びして頑張ろうとする気持ちが表れています。一方、ウルスラの話し方には、自分の考えを持ち、相手の悩みを受け止める余裕が感じられます。

同じ声優が演じていても、二人は別々の人物として描かれています。そのうえで声のつながりを知ると、ウルスラの中に、キキがこれから身につけていくかもしれない落ち着きを感じることもできます。

ウルスラとキキの出会いは黒猫のぬいぐるみ

キキとウルスラが知り合うきっかけは、宅急便の仕事で運んでいた黒猫のぬいぐるみです。

配達の途中でぬいぐるみを落としてしまったキキは、それを探すために森へ向かいます。そこで出会うのが、ぬいぐるみを拾っていたウルスラでした。

ウルスラは、破れていたぬいぐるみを直してくれます。キキにとっては、仕事の失敗を助けてくれた相手です。

ここで興味深いのは、二人が最初から深い悩みを語り合うわけではないことです。落とし物を探している人と、それを拾った人。まずは、具体的な困り事を通じて関係が始まります。

キキは、知らない町で自分の力を使って働こうとしています。配達を任されれば、荷物を届ける責任がある。ぬいぐるみを失くしたまま、何もなかったことにはできません。

そんなときに手を貸してくれたウルスラは、キキにとって、頼っても大丈夫だと思える相手になったと考えられます。

人と仲良くなるきっかけは、立派な言葉とは限りません。困ったときに助けてもらったことや、一緒に何かを片づけたことが、後から大きな意味を持つ場合もあります。二人の出会いには、そうした関係の育ち方が表れています。

ウルスラはなぜキキの悩みを理解できるのか

二人の関係が深まるのは、キキが空を飛べなくなってからです。ウルスラはキキの不調を知り、森の小屋へ泊まりに来るよう誘います。

キキにとって、空を飛ぶことは、自分が使える魔法であり、仕事を支える力でもあります。それができなくなるのは、単に一つの作業がうまくいかないという話ではありません。

町でどう暮らしていけばいいのか。お届け屋さんを続けられるのか。自分には何ができるのか。そうした不安にもつながる状況です。

ウルスラは魔法の専門家として原因を説明するのではなく、絵を描く自分にも、うまく描けなくなる時期があったことを話します。

空を飛ぶことと絵を描くことは違っても、自分にとって大切な力が思うように使えなくなる苦しさは、重なり合う。だからこそ、ウルスラの話はキキに届くのだと考えられます。

ここでウルスラは、最初から何でもできた人として振る舞っていません。自分の絵に納得できなかったことや、描くことに行き詰まった経験を伝えます。

順調な人からの励ましは、ときに遠く感じられるものです。でも、自分も立ち止まったことがある人の話なら、今の苦しさを分かってもらえるかもしれない。

ウルスラの言葉が支えになるのは、悩んでいるキキを外側から評価せず、自分にも似た時期があったと示すからでしょう。

また、小屋へ誘う行動にも意味があります。町で仕事を続ける日常から少し離れ、違う場所で話をする。キキにとって、その時間は、飛べるかどうかだけで自分を判断する状態から離れるきっかけになったように見えます。

ただし、森へ行けば必ず問題が解決する、と映画が示しているわけではありません。ウルスラとの時間は、キキに代わって答えを出すものではなく、キキが自分の力と向き合い直すための支えとして描かれています。ウルスラはキキの未来?制作上のつながりと物語の違い

ウルスラについて、「成長したキキのような存在」と説明されることがあります。これは、二人の雰囲気が似ているという感想だけではなく、制作上の考え方ともつながっています。

金曜ロードショー公式の解説では、作品に登場する女性たちは各年代を代表し、根本には一人の人物が成長していくイメージがあると紹介されています。キキとウルスラを高山みなみさんが演じる発想も、その考え方から生まれたとされています。

ただし、ウルスラが未来から来たキキ本人という設定ではありません。物語の中では、違う場所で暮らし、違うことに取り組んでいる二人の少女です。

この制作上のつながりを踏まえると、ウルスラは、キキがこれから出会うかもしれない悩みと、その先の姿を示す人物として受け取れます。

今のキキには、できていたことができなくなる理由が分かりません。一方のウルスラは、自分の絵に納得できない時期を経験しています。そこで何も悩まなくなったわけではなく、悩みながら描くこととの付き合い方を少しずつ見つけているのです。

成長するというのは、不安が全部なくなることではないのかもしれません。不安になったときに、自分を追い詰める以外の向き合い方を持てるようになる。ウルスラには、そんな少し先の姿が見えます。

ウルスラは魔女なのか?監督の発言をどう受け取るか

ウルスラは、作中でキキのようにほうきで空を飛んだり、魔法を使ったりする人物としては描かれていません。

一方、金曜ロードショー公式記事では、宮崎駿監督がウルスラを魔女になぞらえた発言も紹介されています。カラスやキキを自分の絵の世界へ引き込む、彼女の魅力に触れたものです。

ここは、作中で確認できる能力と、監督が人物を表現した言葉を分けて考える必要があります。この発言だけで、ウルスラにもキキと同じ魔法の能力があると決めることはできません。

むしろ、目の前にいる相手から、自分が描きたいものを見つける力。相手がまだ気づいていない魅力を見て、絵にしようとする姿。その働きを、魔女のようだと受け取ることができます。

キキは空を飛ぶことで荷物を届け、ウルスラは絵を描くことで自分の見つけたものを表現する。使う力は違いますが、自分の持っているものを頼りに、世界と関わろうとしている点では重なっています。

ウルスラの絵にキキが必要だったことの意味

森の小屋で、ウルスラはキキに制作中の大きな絵を見せます。そして、絵の中の少女を描くために、キキにモデルになってもらいます。

この場面では、いつも助ける側に見えるウルスラも、キキとの出会いから制作のきっかけを得ています。

キキはウルスラに支えられるだけでなく、ウルスラが絵を描くうえでも意味のある存在になっているのです。

飛べなくなったキキは、自分の力が弱くなったことに悩んでいます。しかし、ウルスラは、そのキキを絵のモデルとして必要とします。配達ができるかどうかとは別のところで、キキの姿に価値を見いだしているように見えます。

自分が大事にしてきたことができなくなると、自分そのものまで駄目になったように感じてしまうことがあります。でも、周りの人が見ている自分は、それだけではない。

キキが飛べない間も、ウルスラとの関係は続いている。この場面には、そんな静かな支えがあります。

また、キキをモデルにすることは、ウルスラの制作にも変化をもたらします。年上だから完成していて、年下だから教わるだけ、という関係ではありません。二人は違う形で、互いの力になっています。

ウルスラの自由な暮らしにも、描くことの難しさがある

森の小屋で絵を描くウルスラの姿は、町で配達の仕事に追われるキキと比べると、自由に見えるかもしれません。

ただ、映画ではウルスラの収入や生活費、将来の仕事について詳しく説明されていません。絵だけで十分に暮らせているのか、生活に不安がないのかは分からないのです。

描かれているのは、自分で選んだ絵に向き合っていても、思うように描けないことがある、という姿です。

誰かに命令されて描いているわけではなくても、自分の絵に納得できなければ苦しい。好きで選んだことにも、立ち止まる時期はあるんよな。

ウルスラは、自由に生きれば悩みが消えるという人物ではありません。自分のやりたいことを持ち、その難しさも経験しているからこそ、キキの相談相手になれます。

そして、キキがウルスラと同じ暮らし方を選ぶ必要もありません。絵描きになるわけでも、森に住み続けるわけでもない。違う生き方をしている人の経験が、自分の道を考える助けになるのです。

誰かの生き方をそっくりまねしなくても、その人の言葉から受け取れるものはある。二人の関係は、そのことも示しているように見えます。

まとめ|ウルスラはキキと互いに支え合う年上の友人

『魔女の宅急便』のウルスラは、森の丸太小屋で絵を描く18歳の少女です。黒猫のぬいぐるみをきっかけにキキと出会い、飛べなくなったキキに、自分も制作に行き詰まった経験を話します。

制作上は、キキの少し先の成長した姿を重ねられる人物ですが、物語の中では独立した一人の少女です。監督が魔女になぞらえた発言も、キキと同じ魔法を使えるという設定とは区別する必要があります。

ウルスラがキキに与えるのは、すべてを解決する答えではなく、悩みながら自分の力と付き合っていくための視点です。

その一方で、キキもウルスラの絵に新しいきっかけを与えています。助ける人と助けられる人に固定されず、互いに相手の世界を広げている。その関係こそ、ウルスラという人物の大切な役割ではないでしょうか。

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