庵野秀明はなぜ『宇宙戦艦ヤマト』を作る?作品への思いと発言を紹介

『宇宙戦艦ヤマト√2199』の制作発表で、「庵野秀明さんは、なぜ今ヤマトを作るの?」と気になった人もいるのではないでしょうか。

本人の公式コメントから確認できるのは、人生に大きな影響を与えたヤマトへの感謝と恩返し、そして作品を後世へ残したいという思いです。

少年時代に好きだった作品を、自分の手で作る。その夢も制作の背景にあります。ただ、庵野さんの発言を読むと、目標は自分の夢をかなえることだけにとどまっていません。

この記事では、本人のコメントを掲載したカラーと東北新社の公式ページをもとに、ヤマトとの出会い、新作を作る理由、次の世代へつなごうとする思いを紹介します。

庵野秀明にとってヤマトは、人生を変えた作品

庵野秀明さんは、2024年10月6日にカラーが公開した新作企画のお知らせで、ヤマトとの出会いがなければ現在の自分はいなかったと思う、という趣旨を述べています。

これは、単に好きなアニメの一つという紹介ではありません。本人が、自分の人生を考えるうえで欠かせない作品として語っていることが分かります。

出典:株式会社カラー公式・2024年10月6日の庵野秀明コメント

さらに、東北新社が2024年3月30日に公開した50周年企画の発表には、庵野さんの少年時代の記憶が掲載されています。元になったのは、2023年10月13日の公式Xへの投稿です。

そこでは、中学2年生からのヤマトファンとして、オープニングの絵や歌、タイトルの動き、艦長室から引いていくヤマトの映像に強く引きつけられたことを振り返っています。

出典:東北新社公式・50周年企画と庵野秀明のコメント

この振り返りで印象に残るのは、「好きだった」という気持ちに加えて、どんな映像に心をつかまれたのかが具体的に語られているところです。

絵と歌が組み合わさり、タイトルから船の姿へつながる。その見せ方が、長い年月を経ても記憶に残っている。本人の言葉からは、ヤマトとの出会いが、物語だけでなく映像そのものとの出会いでもあったことがうかがえます。

何十年も前の作品なのに、心をつかまれた瞬間を具体的に語れる。それだけ深く残った作品なんやな、と感じます。

新作を作る理由にある「感謝・敬意・恩返し」

2024年10月6日のコメントで、庵野さんはヤマトに関わったスタッフやキャストへの感謝、敬意、恩返しを制作への思いとして挙げています。

自分を育ててくれた作品に、今度は作り手として関わる。その参加を、先人への恩返しとして捉えていることが、新作を作る理由の一つです。

大切なのは、感謝の対象として、ヤマトに関わったさまざまなスタッフやキャストに触れていることです。作品を生んだ人たち、映像や音を形にした人たち、登場人物に声を与えた人たち。その仕事への敬意が、本人の発言に含まれています。

そして、感謝を伝えるだけでなく、新旧の要素を織り交ぜた作品を作り、ヤマトを後世へ残したいと述べています。

出典:株式会社カラー公式・新作企画への思い

ここからは、過去の作品への敬意と、新しい作品を作ることを、庵野さんが結びつけて考えていると受け取れます。

昔のまま保存することにも意味があります。一方、新しい作品を作れば、これまでヤマトに触れてこなかった人が出会う機会にもなります。庵野さんが語る「後世へ残す」という目標には、そうした新たな入口を作る意味もあるのかもしれません。

ただし、これは発言からの解釈です。新作がどの場面や設定を受け継ぐのか、具体的な内容を示す説明ではありません。

少年時代の夢から、次の100周年を見据えた目標へ

制作の目的をさらに詳しく語っているのが、2024年10月13日にカラーが公開した「『宇宙戦艦ヤマト』という作品との関わりについて」という本人の文章です。

この中で庵野さんは、中学2年生だった自分の夢をかなえることだけを目標にせず、次の100周年へ続いていく可能性の高い作品群にすることを心がけていると説明しています。

出典:株式会社カラー公式・2024年10月13日「『宇宙戦艦ヤマト』という作品との関わりについて」

ここでいう100周年は、完成した作品の公開予定日ではありません。ヤマトという作品が、さらに長い時間を越えて続くことを目指した言葉です。

また、複数の作品を思い描いた発言であっても、それだけで映画の本数や続編の制作が正式に決まったとは言えません。本人の目標と、個々の作品の制作発表は分けて読む必要があります。

それでも、この発言からは、目の前の一作だけで終わらず、自分たちの後にもヤマトが続くことを意識していると分かります。

少年時代に受け取ったものを、今度は次の人へ渡す。自分が好きだった時間を振り返るだけでなく、まだヤマトを知らない人の未来にも目を向けている。そこに、今回の制作への思いを理解する手がかりがあるように感じます。

好きな作品を自分で作れるなら、まず「自分が見たかったもの」を形にしたくなると思います。そのうえで、さらに先へ続く作品を目指す。庵野さんのコメントには、ファンとしての願いと、作り手として引き継ぐ意識の両方が表れているのではないでしょうか。

庵野秀明は、複数の「ヤマト」が存在することをどう考えている?

新たなヤマトを作る理由を知るうえで、もう一つ気になるのが、庵野秀明さん自身の作品観です。

2024年10月13日の公式文章では、少年時代からテレビ、映画、小説、漫画などで、それぞれ異なるヤマトに触れていたことを振り返っています。

庵野さんにとってヤマトは、同じ題材から複数の世界が生まれ、それぞれの作り手が個性を発揮してきた作品でした。

出典:株式会社カラー公式・2024年10月13日「『宇宙戦艦ヤマト』という作品との関わりについて」

この考え方を知ると、既存のリメイクシリーズとは別に、新作を作ろうとしていることも理解しやすくなります。

過去にさまざまな作り手が、それぞれのヤマトを描いてきた。その流れに、自分たちも加わる。本人は、複数のヤマトが並んで存在することを、作品の歴史を受け継ぐあり方として捉えています。

これは、「新しいものができれば、前の作品は必要なくなる」という見方ではありません。好きなヤマトを大切にしながら、別の作り手によるヤマトにも出会える。その広がりに意味を見いだしていると受け取れます。

長く続く作品ほど、最初に出会った一作への思い入れは強くなるんよな。だからこそ、新作を見るときも、自分の好きな作品と違う部分が気になるかもしれません。

ただ、庵野さんの文章を読むと、違いがあること自体もヤマトの歴史の一部なのだと考える手がかりになります。

『3199』への言葉に表れる、既存シリーズへの敬意

庵野さんは、新作について説明する一方で、既存のリメイクシリーズにも言及しています。

2024年10月6日の企画発表では、『2199』から『REBEL3199』へ連なるシリーズとは異なる方向へ進む作品だと説明し、その制作が無事に進むことを願う言葉を添えています。10月13日の文章でも、改めて『3199』への思いが記されています。

出典:株式会社カラー公式・新作企画発表/株式会社カラー公式・作品との関わりについて

公式コメントでは、自分たちの新作への意欲と、すでにヤマトを作っている人たちへの敬意が、同時に語られています。

そのため、新作発表を「既存シリーズを否定して作り直す」と説明する根拠はありません。

むしろ、別のヤマトが進んでいることを認めながら、自分たちも新たな作品を作る。その姿勢が、先ほどの「複数のヤマトが存在する」という作品観につながっているように見えます。

見る側も、どちらが正しいヤマトかを急いで決める必要はないのかもしれません。それぞれの作品が何を描き、何に心を動かされるのか。その違いを楽しむ余地もありそうです。

新作だけでなく、過去のヤマトを伝える活動にも参加

庵野さんのヤマトへの関わりは、新作映画の企画だけではありません。

東北新社が2024年3月30日に発表した放送50周年企画では、庵野さんの申し出をきっかけに、企画・プロデュースへ参加することになったと説明されています。

発表された企画には、書籍、テレビシリーズの記念上映、関連資料を集めた展覧会などが含まれていました。

出典:東北新社公式・『宇宙戦艦ヤマト』放送50周年企画

ここから確認できるのは、新たな作品を作る活動と、過去の作品や資料に触れる機会を作る活動の両方に関わっているということです。

映画を見ても、普段は制作資料まで目にする機会は多くありません。上映や出版、展覧会は、完成した映像だけでなく、それを生んだ仕事へ目を向ける入口にもなります。

新作で初めてヤマトを知った人が、過去作に興味を持つこともあるでしょう。反対に、昔の資料や上映をきっかけに、新作へ関心が向くことも考えられます。

こうした活動を並べて見ると、本人が語る「後世へ残す」という目標が、新作制作だけに限られないことが分かります。

制作への思いと、新作の物語は分けて読む

ここまでの発言から、ヤマトへの感謝、先人への敬意、作品を将来へつなぎたいという制作の背景は確認できます。

ただし、それをそのまま『宇宙戦艦ヤマト√2199』の物語のテーマとして説明することはできません。

例えば、「恩返しが主人公の行動の軸になる」「次の世代への継承が結末で描かれる」といった内容は、今回紹介したコメントからは分かりません。本人がなぜ作るのかという話と、本編で何が起きるのかという話は別です。

制作への思いを知ったうえで、実際の作品がどんな表現を見せるのかを待つ。そうすることで、コメントへの共感と、映画そのものの感想をそれぞれ大切にできると思います。

まとめ|ヤマトへの恩返しと、未来へ残すための新作

庵野秀明さんが『宇宙戦艦ヤマト』を作る理由として、公式コメントから確認できるのは、人生を変えた作品への感謝と恩返し、そしてヤマトを後世へ残したいという思いです。

少年時代の夢が背景にありながら、目標は自分の願いをかなえることだけではありません。次の100周年へ続く可能性を意識し、複数の作り手がそれぞれのヤマトを描いてきた歴史を受け継ごうとしています。

既存シリーズへの敬意や、上映・出版・展覧会への参加も、その思いを知る手がかりになります。

大切だった作品に、今度は作る側として関わる。その思いが、どんな映像や物語になるのか。『√2199』を見るときには、本人が語った言葉と、完成した作品の表現を照らし合わせて考えてみたいですね。

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