『ナウシカ』ペジテとは?滅ぼされた理由とトルメキアとの関係

『風の谷のナウシカ』に登場するペジテは、アスベルやラステルの故郷である工房都市国家です。物語の途中ではすでに街が壊滅しているため、「どんな国だったのか」「なぜトルメキアに狙われたのか」が分かりにくいかもしれません。

ペジテがトルメキアに襲撃された大きな理由は、街の地下で巨神兵が発見されたことです。ただし、トルメキアによる侵攻・占領と、その後に蟲の群れによって街が壊滅する出来事は、分けて整理する必要があります。

この二つを一つの出来事として捉えると、ペジテ側が何をしたのか、なぜ風の谷まで危険にさらされるのかが見えにくくなります。

この記事では映画版を中心に、ペジテの特徴、トルメキアとの関係、街が失われるまでの流れを解説します。原作漫画とは展開や設定が異なるため、漫画版の情報を映画の出来事として混ぜずに見ていきます。

※ここから映画『風の谷のナウシカ』の後半の展開までネタバレします。

『ナウシカ』のペジテとは?アスベルとラステルの故郷

ペジテは、ものづくりの拠点として紹介される工房都市国家です。日本テレビの公式解説では、エトナ山脈によって腐海と隔てられた街と説明されています。

詳しくは、日本テレビ「金曜ロードシネマクラブ」のペジテ解説で確認できます。

映画でペジテを理解する手がかりになるのが、王女ラステルと、その兄であるアスベルです。ラステルは冒頭で風の谷に墜落した輸送船に乗っており、アスベルは後にトルメキアの船団を攻撃します。

二人の登場場面は離れていますが、どちらも故郷を襲ったトルメキアとの戦いにつながっています。アスベルの攻撃も、単に好戦的な人物だからという説明では捉えきれません。彼は、故郷と妹を失った側の人物なのです。

一方、映画は平穏だったころのペジテの暮らしを詳しく描いてはいません。街の制度や住民の日常について、画面にない設定まで補うことはできません。

映画のペジテは、主に「巨神兵が発見された場所」と「故郷を失った人々の出身地」という二つの役割から理解すると分かりやすくなります。

ペジテがトルメキアに狙われた理由は、地下で見つかった巨神兵

ペジテの地下では、かつて「火の七日間」で使われた巨神兵が発見されます。トルメキアはその巨神兵を奪い、輸送していました。

この経緯は、日本テレビの映画紹介・あらすじでも説明されています。ペジテへの侵攻と、風の谷に墜落した船の積み荷は、同じ巨神兵をめぐる出来事です。

つまり、ペジテとトルメキアの対立を理解するうえで重要なのは、土地そのものだけでなく、そこで見つかった圧倒的な力を持つ兵器です。

映画では、クシャナが巨神兵の力を使って腐海を焼き払おうとします。巨神兵は、ただ保管しておきたい珍しい遺物ではなく、現実に使うことを想定された戦力として扱われています。

ここからは考察ですが、巨神兵を手に入れることは、トルメキアにとって腐海への対抗手段を得るだけでなく、ほかの国に対して強い立場を持つことにもつながると考えられます。

ペジテからすれば、自分たちの街で見つかったものを、軍事力の強い国に奪われたことになります。発見した側が、その力を自由に扱えるとは限らない。むしろ、強大な兵器が見つかったことで、街そのものが攻撃の対象になってしまいます。

「すごいものを見つけたから豊かになる」とはならず、それを欲しがる相手に狙われる。この逆転が、ペジテの悲劇の出発点なんよな。

「トルメキアに襲われた」と「蟲に壊滅させられた」は別の出来事

ペジテが滅ぼされた理由を整理するとき、特に大切なのが出来事の順番です。

まず、巨神兵を狙ったトルメキア軍がペジテに侵攻し、街を占領します。その後、ペジテ側は街にいるトルメキア軍を倒すため、蟲を誘導する作戦を実行します。

ナウシカとアスベルがたどり着いたペジテが壊滅しているのは、この蟲の襲来を経た後です。したがって、「トルメキア軍が街をすべて直接破壊した」とだけ説明すると、映画で明かされるペジテ側の行動が抜け落ちます。

流れを簡単にまとめると、次のようになります。

段階起きたこと
巨神兵の発見ペジテの地下で巨神兵が見つかる。
トルメキアの侵攻巨神兵を狙う軍に街を占領され、巨神兵を奪われる。
ペジテ側の反撃占領軍を倒すため、蟲を街へ誘導する。
街の壊滅蟲の群れによって、ペジテの街も破壊される。

ペジテは侵略された側ですが、その後の反撃では、自分たちの街まで失う手段を選んでいます。

これは、最初の侵攻の責任が消えるという意味ではありません。トルメキアに襲われたことと、ペジテ側が蟲を利用したことは、どちらも物語を理解するために必要な出来事です。

敵を倒すことには成功しても、取り戻したかった故郷は壊れてしまう。その結果を見ると、この作戦を単純な勝利として受け取ることは難しいでしょう。

ペジテの人々は、なぜ故郷を壊す作戦を選んだのか

映画で明らかになる作戦の目的は、ペジテを占領したトルメキア軍を倒すことです。ただし、住民全員の気持ちや、作戦を決めるまでの話し合いが詳しく描かれているわけではありません。

そのため、「全員が復讐だけを望んでいた」「故郷より兵器を大切にしていた」とまで断定するのは行き過ぎです。

ここからは解釈ですが、通常の軍事力では占領軍に対抗できない状況で、蟲の力を使うことが突破口になると考えたのかもしれません。その選択には、故郷を奪われた怒りと、追い詰められた人々の切迫感が重なっているように見えます。

ただ、事情を理解できることと、その手段を肯定できることは別です。蟲を誘導すれば、攻撃の影響を人間側の都合だけで収められるとは限りません。

故郷を取り戻すための反撃が、故郷を失う結果にもつながる。ペジテの悲劇には、目的と手段が食い違っていく怖さがあります。

そして、この作戦はペジテだけで終わりません。巨神兵が風の谷にあると知った人々は、次にその谷へ蟲を向かわせようとします。そこで、トルメキアへの反撃が、戦いに巻き込まれた別の国の人々を犠牲にする問題へ変わっていくのです。

ペジテが風の谷を狙うのは、巨神兵を取り戻すため

ペジテの生き残った人々は、奪われた巨神兵が風の谷にあることを知り、谷へ王蟲の群れを誘導しようとします。狙いは、そこにいるトルメキア軍を壊滅させ、巨神兵を取り戻すことです。

そのために利用されるのが、傷つけられた王蟲の子です。子を運び、それを追う王蟲の群れを風の谷へ向かわせる。映画の終盤に迫る危機は、人間が王蟲の怒りを戦いに利用することで生まれています。

しかし、風の谷にいるのはトルメキア兵だけではありません。そこには、侵攻され、巨神兵を持ち込まれた谷の住民も暮らしています。

ペジテ側の作戦は、敵軍を倒すために、敵ではない風の谷の人々まで犠牲にするものです。ここで、ペジテは侵略の被害を受けた側でありながら、別の人々を傷つける側にもなってしまいます。

ペジテと風の谷の間に、もともと敵対関係があったからではありません。巨神兵が谷に運ばれ、トルメキア軍が駐留したことで、谷が作戦の標的になるのです。

故郷を奪われた怒りには理解できる部分があっても、「だから別の国を犠牲にしてよい」とはならない。このずれが、ペジテとナウシカの対立を生みます。

ナウシカとペジテ側は、何を守るかで食い違う

ナウシカは、風の谷を犠牲にする作戦に反対します。しかし、作戦を進めるペジテ側は彼女を拘束し、谷へ戻って危険を知らせることを阻みます。

ここでの食い違いは、トルメキアの侵攻をどう評価するかだけではありません。敵に対抗するため、どこまでの犠牲を認めるのかという問題です。

ペジテ側は、巨神兵を奪い返し、トルメキアに対抗することを優先しています。一方、ナウシカは、その作戦で失われる風の谷の人々や、傷つけられている王蟲の子に目を向けます。

ここからは考察ですが、ナウシカはペジテの苦しみを否定するのではなく、そこからさらに被害が広がることを止めようとしていると受け取れます。

自分たちが受けた被害を忘れないことと、ほかの誰かを犠牲にしないこと。その両方を考えなければ、争いは終わらないのかもしれません。

相手を倒す理由ばかりが大きくなると、その途中で誰が傷つくのかが見えなくなる。ペジテの作戦は、その怖さを具体的に示しているように見えます。

アスベルとペジテの女性たちは、ナウシカを助ける

ただし、ペジテの人々を、全員同じ考えの集団として捉えることはできません。

アスベルは風の谷を犠牲にする作戦に反対します。また、彼の母をはじめとするペジテの女性たちは、拘束されたナウシカが船から脱出できるように協力します。一人の少女がナウシカと服を交換して身代わりになり、彼女を谷へ戻そうとするのです。

この場面は、ペジテという国を見るうえで重要です。故郷を失った人々の中にも、別の国を犠牲にすることに従えない人たちがいます。

ペジテ側の作戦を批判することと、ペジテの住民全員を悪者にすることは別です。

ナウシカを助ける人々も、同じように故郷を失った側です。それでも、風の谷の人々を救うために行動します。被害を受けた人が、必ず同じ方法で反撃を選ぶわけではないことが、この場面から分かります。

アスベルにも変化が見えます。登場時にはトルメキアの船団を攻撃する彼が、後には自分の国の人々が進める作戦に反対する。故郷への思いがなくなったのではなく、そのために何をしてよいのかを問い直す姿として読むことができます。

同じ国の仲間だからこそ、反対するのは簡単ではないはずです。それでも止めようとするところに、アスベルの大切な役割があるんちゃうかな。

トルメキアとペジテには、強い力を利用しようとする共通点がある

トルメキアは巨神兵を使い、腐海を焼き払おうとします。ペジテ側は蟲を誘導し、トルメキア軍を倒そうとします。

使うものと目的は異なりますが、人間よりはるかに大きな破壊力を、自分たちの目的のために動かそうとする点では共通しています。

これは両者の責任が同じだという意味ではありません。トルメキアによる侵攻が、ペジテの人々を追い詰めた背景にあることは、分けて考える必要があります。

一方で、被害を受けた側が選ぶ手段も、無条件に正しいとは限りません。映画では、ペジテ側の作戦によって風の谷が危機に陥り、王蟲の子も傷つけられています。

ここからは解釈ですが、両者は、自分たちが望む結果のために、扱いきれるとは限らない力へ頼っているようにも見えます。

巨神兵は未完成の状態で動かされ、崩れていきます。王蟲の群れも、ひとたび怒りに駆られれば、都合よく敵兵だけを攻撃してくれるわけではありません。

強大な力を使えることと、その結果を制御できることは別です。ペジテの街が失われ、さらに風の谷まで危険になる流れには、その隔たりが表れていると考えられます。

ペジテの結末から、国が完全に再建されたとは断定できない

映画の終盤では、ナウシカが王蟲の子を群れへ返そうとし、最終的に王蟲の暴走は止まります。ペジテ側が進めた、風の谷を壊滅させる作戦は、そのままの形では実現しません。

ただし、それによって失われたペジテの街まで元に戻るわけではありません。結末後に都市国家としてどのように再建されたのか、住民全員がどこで暮らすようになったのかも、映画だけでは確定できません。

ラストに希望を感じることと、ペジテの将来がすべて保証されたと考えることは、分けたいところです。

それでも、ナウシカに協力した人々の行動には、別の道を選ぶ可能性が見えます。故郷を失った後、さらに誰かの故郷を壊すことを止める。その選択が、次の暮らしを考える出発点になるのかもしれません。

まとめ:ペジテは巨神兵をめぐる争いに巻き込まれ、反撃で街も失った

映画『風の谷のナウシカ』のペジテは、アスベルとラステルの故郷である工房都市国家です。地下で巨神兵が見つかったことからトルメキアに狙われ、侵攻・占領されます。

その後、ペジテ側が占領軍を倒すために蟲を誘導し、街そのものも壊滅します。さらに巨神兵を取り戻そうとして風の谷を標的にしたことで、ナウシカと対立することになります。

ペジテの悲劇を理解するには、侵略された事実と、その後に自分たちが選んだ反撃を分けて見ることが大切です。

そして、ペジテの人々が全員その作戦に賛成したわけではありません。アスベルや女性たちがナウシカを助ける姿には、故郷への思いを持ちながらも、別の人々を救う道を選べることが描かれています。

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