『猫の恩返し』ナトルとは?ハルを猫の国へ誘う猫の人物像

『猫の恩返し』に登場するナトルは、ハルに猫の国への招待を伝える猫です。親しみやすい調子で話を進める一方、ハルの気持ちとかみ合わないところもあり、印象に残る存在です。

ナトルの人物像を考えるポイントは、猫の国への歓迎を伝えながら、ハルの拒否や戸惑いを、そのまま受け止めていないところにあります。愛嬌のある振る舞いと、相手との認識のずれを分けて見ると、物語での役割が分かりやすくなります。

この記事では、公式に確認できるやり取りと制作記録をもとに、ナトルとハルの関係、声を担当した俳優、猫の国へ誘う役割を整理します。

※ここから『猫の恩返し』の物語の展開に触れます。

『猫の恩返し』ナトルとは?ハルに招待を伝える猫

物語のきっかけは、高校生のハルが、車にひかれそうになった猫を助けたことです。助けた相手は猫の国のルーン王子で、その出来事から、ハルへの「恩返し」が始まります。

この恩返しの流れの中で、ハルに猫の国への招待を伝えるのがナトルです。「金曜ロードショー」公式も、ナトルがハルを猫の国へ招く場面を紹介しています。

出典:「金曜ロードショー」公式『猫の恩返し』作品紹介/アニメイトタイムズ掲載の「金曜ロードショー」公式投稿:ナトルの招待場面

ここで押さえたいのは、ナトルが、猫の側からハルへ話を持ちかける人物だという点です。ハルが自分で猫の国への旅行を計画していたわけではありません。

ハルにとっては、猫を助けるという一つの行動が、思いも寄らない招待へつながっていきます。ナトルは、その不思議な世界をハルの目の前に差し出す役割を持っています。

歓迎する側と、招かれる側には違いがある

猫たちからすれば、王子を助けたハルを歓迎することは、立派なお礼に見えるのかもしれません。

しかし、何をしてもらえばうれしいかは、人間と猫で同じとは限りません。さらに、招待する側が喜ばしいことだと思っていても、招かれる側が同じように感じるとは限らないものです。

ナトルを見るときは、歓迎の言葉だけでなく、それに対してハルがどう反応しているかにも注目すると、二人のずれが見えてきます。

ナトルの声は濱田マリ|ジブリの制作記録でも確認できる

ナトルの日本語の声を担当しているのは、濱田マリさんです。

スタジオジブリの制作日誌には、2002年5月12日、ハル役の池脇千鶴さんとナトル役の濱田マリさんの収録から、アフレコが始まったことが記されています。

出典:スタジオジブリ公式「ジブリ日誌」2002年5月・5月12日の記録

人物像を考える際には、ナトルの話す内容に加え、声の調子にも注目したいところです。相手を怖がらせるように話す場合と、親しげに当然のこととして話す場合では、同じ内容でも受ける印象が変わります。

ナトルのやり取りは、ハルの困惑との組み合わせで見ると、その面白さと、少し落ち着かない感じを考えやすくなります。

ハルの拒否を「結婚前の不安」と受け取るナトル

ナトルとハルの認識のずれが分かりやすいのが、ハルが帰りたいと訴える場面です。

「金曜ロードショー」公式の投稿では、帰ることを求めるハルに対し、ナトルが結婚前の不安、いわゆるマリッジブルーだと受け取るやり取りが紹介されています。ハルは、それを否定しています。

出典:「金曜ロードショー」公式:ハルとナトルのやり取り

この場面から確認できるのは、ハルの訴えと、ナトルによる説明が一致していないことです。

ハルが帰りたいと言っているのに、その言葉が「結婚を前に気持ちが揺れている」という別の意味へ置き換えられてしまう。ここに、会話のかみ合わなさがあります。

悪気の有無と、相手の話を聞けているかは別

このやり取りだけで、ナトルの内心まで決めつけることはできません。「ハルを困らせたい」と考えているのか、それとも猫の国の考え方から疑わずに話しているのかは、分けて考える必要があります。

ただ、どちらであっても、ハルの意思が正しく受け止められていない点は変わりません。

ナトルの怖さを考えるなら、露骨な敵意よりも、相手の拒否を自分の理解できる理由へ置き換えてしまうところに注目できます。

もちろん、これはやり取りからの考察です。ナトルを単純な悪役と決めつける説明ではありません。

親しげに話してくれていても、こちらの「違う」が通じないと困るんよな。明るい会話の中にも、ハルにとっては、自分の意思を伝え直さなければならない状況があります。ナトルとナトリは別の猫?名前が似ているので注意

『猫の恩返し』には、ナトルとは別にナトリという猫も登場します。名前が一文字違いなので、人物紹介を読んでいると混同しやすいところです。

声の担当で整理すると、ナトルは濱田マリさん、ナトリは佐戸井けん太さんです。スタジオジブリの2002年5月の制作日誌でも、それぞれの収録が別の日の記録として紹介されています。

登場する猫声の担当制作日誌の記録
ナトル濱田マリ2002年5月12日の録音に登場
ナトリ佐戸井けん太2002年5月17日の録音に登場

今回取り上げているのは、ハルへ猫の国からの招待を伝えるナトルです。「ナトルについて調べたつもりが、別の猫の説明を読んでいた」ということがないよう、まず名前を分けておくと分かりやすくなります。

ナトルの登場に笑いが起きた、公開当時の公式記録

ナトルは、ハルを困らせる立場だけで説明すると、そのおかしみが抜け落ちてしまうキャラクターでもあります。

スタジオジブリの2002年8月の制作日誌には、ソウル・アニメーションセンターで行われた上映についての記録があります。8月7日の記述では、上映中に笑いが起き、とりわけナトルの登場に反応がよかったと報告されています。

これは、その上映会での反応を伝える記録です。これだけで、すべての観客が同じように受け取ったとは言えません。ただ、ナトルが笑いを生む存在として受け止められた具体的な例としては参考になります。

そのおかしさを考える手がかりになるのが、ハルとの会話のずれです。ハルは真剣に帰りたいと訴えている。それなのに、ナトルは結婚前の不安として話を進めてしまう。切実な訴えと、どこかのんびりした受け答えがかみ合いません。

ハルの立場なら困る場面ですが、外から見ると、そのかみ合わなさが笑いにもなるんよな。困った相手であることと、キャラクターとして愛嬌があることは両立する。ナトルには、そんな受け取り方のできる面白さがあります。

ナトルは悪役なのか?ハルを困らせる行動と内心を分けて考える

では、ハルの希望を受け止めずに話を進めるナトルは、悪役なのでしょうか。

ここでは、行動と内心を分けて見る必要があります。ナトルの受け答えによって、ハルの困惑が深まることは読み取れます。一方で、ハルを苦しめるために招待したのか、本人なりに歓迎しているのかという内心まで、会話だけで断定することはできません。

そのため、「実は腹黒い」「すべて分かったうえでだましている」といった説明を、確定した設定として扱うのは避けたいところです。ナトルを理解するうえでは、隠された悪意を想像するより、実際にハルへどう接しているかを見るほうが人物像をつかめます。

猫の国の歓迎が、ハルの希望と一致するとは限らない

ナトルは猫の国へ招く側にいます。その立場からすれば、お迎えや結婚の話は、喜ばしい出来事として進められるものなのかもしれません。ただし、これはナトルの態度から考えられる解釈です。

対するハルには、帰りたいという意思があります。そこで起きているのは、単に説明が足りないという問題だけではありません。招く側が思い描く幸せと、招かれた本人が望むことの違いです。

ナトルとのやり取りは、歓迎されていることと、自分の希望を尊重されていることが、必ずしも同じではないと考えさせます。

相手が楽しそうに話しているほど、こちらの戸惑いが置き去りになる。そのずれを、ナトルは軽やかな受け答えの中で見せているようにも感じられます。

ナトルを見ると、ハルが自分の意思を持つ大切さが見えてくる

猫の国へ招かれるハルは、不思議な出来事に次々と巻き込まれていきます。ナトルは、その世界へハルを導く立場の猫です。

一方、作品の紹介では、バロンの助けを受けながらハルが自分を見失わずに進むことが、物語の大切な流れとして示されています。あらすじはウォルト・ディズニー・スタジオの『猫の恩返し』公式ページでも確認できます。

この流れに沿って考えると、ナトルとの会話は、ハルが周囲に流されず、自分の希望を言葉にする必要に直面する場面とも受け取れます。相手が話をまとめようとしても、自分の気持ちまで同じになったわけではない。その違いをハルは訴えています。

ナトルをただの意地悪な猫として片づけないほうが、この場面は面白くなるんちゃうかな。親しげな相手にも、自分の意思を伝えなければならないことがある。ハルの困惑を通して、そんな難しさが見えてきます。

まとめ|ナトルは、猫の国の歓迎とハルの戸惑いをつなぐ猫

『猫の恩返し』のナトルは、ハルに猫の国からの招待を伝える猫で、声を担当しているのは濱田マリさんです。名前の似ているナトリとは別のキャラクターです。

人物像を考えるうえで印象的なのは、親しげな態度と、ハルの訴えをそのまま受け止めない会話のずれ。そのずれには笑いがあり、ハルの立場で考えると困ってしまうところもあります。

ナトルは、猫の国が用意した歓迎と、ハル自身が望むことの違いを浮かび上がらせる存在と考えられます。

かわいらしさや話し方に注目するだけでなく、「このとき、ハルの気持ちは伝わっているだろうか」と考えてみる。そうすると、ナトルとの短いやり取りからも、物語の大切な部分が見えてきます。

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