『火垂るの墓』原作は小説?野坂昭如の作品と収録本を紹介

『火垂るの墓』には原作があるのでしょうか。映画の印象が強い作品ですが、「もともとは小説なのか」「原作を読むなら、どの本を探せばよいのか」と気になる人もいると思います。

最初に答えると、『火垂るの墓』の原作は、野坂昭如が書いた同名の短編小説です。原作を読みたい場合は、新潮文庫『アメリカひじき・火垂るの墓』で読むことができます。

1988年のアニメ映画では、この小説をもとに高畑勲が脚本・監督を担当しました。野坂昭如が原作の書き手、高畑勲が映画化を担った作り手という関係です。

この記事では、原作の作者や発表時期、収録本を整理します。物語の結末の詳しい説明は避け、これから原作を探す人にも分かる形で紹介していきます。

『火垂るの墓』の原作は野坂昭如の短編小説

『火垂るの墓』は、映画の公開に合わせて書かれた小説ではありません。映画より前に発表された文学作品を、アニメーションとして映像化したものです。

スタジオジブリ公式の作品情報では、原作に「野坂昭如(新潮文庫版)」、脚本・監督に「高畑勲」と記載されています。

出典:スタジオジブリ公式『火垂るの墓』作品情報

そのため、原作を探すときは、高畑勲の名前だけでなく、著者名の「野坂昭如」と、小説の題名「火垂るの墓」を確認すると分かりやすくなります。

映画に関する本には、絵本、制作資料集、解説書などもあります。これらも作品を知るための本ですが、野坂昭如が書いた原作小説とは種類が異なります。

映画の物語を文章でたどりたいのか、映画の画像を見たいのか、制作の背景を知りたいのか。目的によって選ぶ本が変わるので、まずは原作小説を読みたいという目的をはっきりさせると、探しやすくなります。

原作者・野坂昭如とは?名前の読み方と作品の背景

野坂昭如の名前は、「のさか・あきゆき」と読みます。新潮社の著者紹介によると、1930年に生まれ、2015年に亡くなった作家です。

コラムニストとしての活動などを経て、小説家としても作品を発表しました。1967年には「アメリカひじき」と「火垂るの墓」を発表し、翌年、この二作で直木賞を受賞しています。

出典:新潮社『火垂るの墓』掲載の野坂昭如プロフィール

同プロフィールでは、「火垂るの墓」は戦争、空襲、焼け跡での体験を描いた作品として紹介されています。つまり、作者自身が経験した戦争と、無関係に生まれた物語ではありません。

ただし、作者の体験を背景にしていることと、登場人物や出来事がすべて事実どおりであることは別です。原作は小説として書かれた作品であり、そのまま記録文書や本人の経歴として扱うことはできません。

体験が物語になるとき、何を残し、何を変え、誰の目から描くのかという選択が生まれます。『火垂るの墓』を読むときにも、現実の経験を背景に持ちながら、文章によって構成された作品なのだと考えておきたいところです。

原作を読むなら『アメリカひじき・火垂るの墓』

原作を探す際に覚えておきたい本が、新潮文庫の『アメリカひじき・火垂るの墓』です。

「火垂るの墓」という小説の題名と、収録されている本の題名が少し違うため、初めて探すと戸惑うかもしれません。しかし、この本には原作の「火垂るの墓」が収められています。

確認する際の基本情報は、次のとおりです。

項目内容
書名アメリカひじき・火垂るの墓
著者野坂昭如
出版社新潮社
シリーズ新潮文庫
ISBN978-4-10-111203-9

出典:新潮社公式『アメリカひじき・火垂るの墓』書誌情報

書店や図書館で見つけにくい場合は、書名と著者名に加えて、ISBNを使うと本を特定しやすくなります。

なお、同じ題名の本でも、出版時期や版によって表紙やページ数が異なる場合があります。古い本の情報と現在の文庫の情報を、無条件に同じものとして比較しないようにしましょう。

『アメリカひじき』は『火垂るの墓』の前編ではない

本の題名だけを見ると、「アメリカひじき」が前半で、「火垂るの墓」が後半なのかと思うかもしれません。

しかし、これは二つの作品名を並べた書名です。「アメリカひじき」と「火垂るの墓」は、別々の短編小説として収められています。

新潮社の紹介では、この本は二つの直木賞受賞作など、計6編を収録する作品集とされています。本全体が、清太と節子の物語だけで構成されているわけではありません。

映画から原作へ入る人は、まず目次で「火垂るの墓」を探せば大丈夫です。他の作品から順番に読まないと内容が分からない、という前後編の関係ではありません。

小説の発表・単行本・文庫・映画は、それぞれ時期が違う

原作を調べると、1967年、1968年、1972年、1988年と、複数の年が出てきます。これは、すべてが同じ出来事の年ではないためです。

年確認できる出来事
1967年野坂昭如が小説「火垂るの墓」を発表
1968年文藝春秋刊『アメリカひじき・火垂るの墓』が刊行
1972年新潮文庫版が刊行
1988年高畑勲が脚本・監督を担当したアニメ映画が公開

1968年の単行本については、国立国会図書館の書誌で、出版者が文藝春秋、出版年が1968年と確認できます。目次にも「火垂るの墓」が掲載されています。

出典:国立国会図書館サーチ『アメリカひじき・火垂るの墓』(1968年刊)

ここで分けたいのは、小説が発表された年と、その小説を収めた本が出た年、映画になった年です。新潮文庫の発売日を見て、原作そのものが1972年に初めて書かれたと判断することはできません。

映画の印象が強いと、小説も同じ頃に生まれたように感じるかもしれません。でも、原作の発表からアニメ映画の公開までは、約20年の隔たりがあります。野坂昭如の文章として存在していた物語を、後に高畑勲が映像へと作り直した。その順序を押さえると、二人の役割も分かりやすくなります。原作の野坂昭如と、映画の高畑勲は役割が違う

『火垂るの墓』の作者について話すときは、小説と映画を分けると整理しやすくなります。

原作小説を書いたのは野坂昭如です。一方、1988年のアニメ映画で脚本・監督を担当したのは高畑勲。スタジオジブリ公式の作品情報でも、この担当が明記されています。

出典:スタジオジブリ公式『火垂るの墓』作品情報

したがって、「高畑勲が原作小説を書いた」「野坂昭如がアニメ映画を監督した」という説明は正確ではありません。

小説の映画化には、文章で書かれた内容を、映像や音でどのように伝えるかという仕事があります。人物の表情、動作の長さ、声、背景、沈黙など、映画ならではの表現を選びながら、一つの作品として組み立てていくのです。

原作の物語を知ることと、映画の演出を理解することは、つながっていながらも別の読み解き方です。映画のある場面について、そのまま原作者の意図だと決めつけず、どの作品で確認できる表現なのかを意識すると、混同を避けられます。

小説と映画は、同じ物語でも伝え方が異なる

原作を読む目的は、映画との違いを探すことだけではありません。文章として書かれた『火垂るの墓』に触れること自体にも意味があります。

映画では、表情や声、画面の構図から人物の様子を受け取ります。小説では、言葉の選び方や文章のつながり、何がどの順番で語られるかが、読む側の印象を作っていきます。

また、映画では場面が一定の速さで進みますが、読書では気になった文章の前で立ち止まれます。少し戻って読み直したり、一度本を閉じたりしながら、自分の速さで物語に向き合えます。

映画で知っている話でも、文字で受け取ると、別のところが気になることもあるやろなと思います。人物の行動を追うだけでなく、語られ方そのものに目を向けられるのが、原作を読む楽しみの一つです。

ただし、具体的な場面の追加や省略、人物描写の違いを説明するには、原作本文と映画の該当部分を照合する必要があります。「原作のほうが残酷」「映画のほうが優しい」といった印象だけで、作品全体の違いを決めることは避けたいところです。

原作小説と、絵本・映画の解説書を見分けるには?

『火垂るの墓』を検索すると、同じ作品名を含む本が複数見つかります。原作小説を探す場合は、表紙の絵や題名だけでなく、著者名と本の種類まで確認すると確実です。

基本となる探し方は、「野坂昭如」「アメリカひじき・火垂るの墓」「新潮文庫」という情報を組み合わせることです。

一方、映画の画像を中心に構成した本や、制作資料を解説する本は、原作小説とは目的が異なります。関連書籍の説明欄に「原作・野坂昭如」とあっても、それだけで、その本に小説本文が収録されているとは判断できません。

購入前や借りる前には、商品説明や図書館の書誌で、次の点を見ると選びやすくなります。

  • 著者は誰か
  • 小説、絵本、資料集、解説書のどれに当たるか
  • 目次や内容紹介に、小説「火垂るの墓」の収録が示されているか

「映画をきっかけに、野坂昭如の文章を読みたい」という場合は、映画関連の本を広く探すより、原作の収録本を指定して探すほうが迷いにくいでしょう。

紙の本以外に、電子書籍や朗読版もある

文章を読むなら文庫または電子書籍

新潮社の公式書誌では、『アメリカひじき・火垂るの墓』は文庫と電子書籍で案内されています。原作を文字で読みたい場合は、この二つが選択肢になります。

出典:新潮社公式『アメリカひじき・火垂るの墓』

紙の本ならページをめくりながら、電子書籍なら対応する端末やアプリで読み進められます。どちらを選ぶかは、普段の読み方に合わせて考えるとよいでしょう。

なお、出版社が電子書籍を案内していることと、すべての読み放題サービスで読めることは別です。利用する場合は、各販売先の対象商品と利用条件を確認してください。

橋爪功による朗読版は、映画の音声とは別のもの

新潮社には、野坂昭如を原作、橋爪功を朗読とする『火垂るの墓』のオーディオブックの案内もあります。公式の書誌では、新潮CDの1枚組・76分として紹介されています。

出典:新潮社公式『火垂るの墓』橋爪功朗読版

これは、アニメ映画の音声をそのまま収録したものではなく、朗読として案内されている商品です。また、文庫の作品集全体と、朗読商品の収録範囲も同じものとして扱わないようにしましょう。

文章を目で追いたいのか、声で聞きたいのかによって、選ぶ形式は変わります。朗読版については、CD商品なのか音声配信なのかも、利用先で確認しておくと安心です。

まとめ|原作を読むなら、野坂昭如の収録本を探そう

『火垂るの墓』の原作は、野坂昭如が1967年に発表した同名の短編小説です。1988年のアニメ映画では、高畑勲が脚本・監督を担当しました。

原作小説を読みたい場合は、新潮文庫『アメリカひじき・火垂るの墓』を探すと分かりやすくなります。これは「火垂るの墓」だけの長編ではなく、「アメリカひじき」なども収めた短編集です。

映画の絵本や制作解説書とは種類が異なるため、著者名と内容紹介を確認して選びましょう。文字で読む文庫・電子書籍に加え、橋爪功による朗読版の案内もあります。

映画から原作へ進むとき、違いの答え合わせだけをする必要はありません。野坂昭如がどんな言葉で兄妹の物語をつづったのか。その文章に、自分の速さで向き合ってみるのも、一つの読み方ではないでしょうか。

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