『風の谷のナウシカ』には、安田成美さんが歌う、映画と同じタイトルの曲があります。それなのに、映画の本編やエンディングでは流れません。「ナウシカの主題歌なのに、どうして?」と疑問に思うところです。
結論からいうと、制作側が映画の内容に合う音楽を優先し、安田成美さんの歌を本編では使わないと判断したためです。この曲には「シンボル・テーマソング」という位置づけが与えられました。
この経緯については、鈴木敏夫さんが、岩波書店の連載「ジブリと音楽」で具体的に説明しています。テレビ放送で省略されたから聞こえない、という話ではありません。
この記事では、安田成美さんの「風の谷のナウシカ」が本編で流れない理由と、主題歌・イメージソング・映画音楽の違いを整理します。物語の結末に関する詳しいネタバレはありません。
安田成美の「風の谷のナウシカ」はどんな曲?
安田成美さんが歌う「風の谷のナウシカ」は、松本隆さんが作詞、細野晴臣さんが作曲した楽曲です。映画公開前にシングルとして発売されました。
映画と同じ題名で、作品に関連して作られた歌ですから、「ナウシカの主題歌」と覚えていても不思議ではありません。ただし、映画のなかで実際に流れる音楽とは分けて考える必要があります。
まず、歌の基本情報を整理しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | 風の谷のナウシカ |
| 歌 | 安田成美 |
| 作詞 | 松本隆 |
| 作曲 | 細野晴臣 |
| 位置づけ | シンボル・テーマソング |
| 映画本編での使用 | 使用されていない |
出典:web岩波「鈴木敏夫 × 田家秀樹 ジブリと音楽」第1回
安田成美の歌が映画で流れない理由は?鈴木敏夫の説明
鈴木敏夫さんの説明によると、レコード会社側から細野晴臣さんへの依頼が先に進み、その後、映画の制作側では曲を本編に使わないという結論に至りました。
理由として語られているのは、宮崎駿さんのアニメーションには、より熱さのある曲が似合うという判断です。細野さんの音楽性を認めながらも、『ナウシカ』という映画の内容との相性を優先した、と説明されています。
その結果、高畑勲さんが「シンボル・テーマソング」という呼び名を考え、宮崎さんも同意したという経緯です。
つまり、制作側が曲を知らなかったわけでも、完成した映画から偶然抜け落ちたわけでもありません。映画にどの音楽を組み合わせるかを検討したうえでの判断でした。
ここからは、その説明を踏まえた考察です。曲を単独で聴いたときの魅力と、映像に重ねたときの効果は、必ずしも同じではありません。場面の緊張感や、登場人物が背負うものによって、合う音楽は変わります。
ええ曲やから、どんな場面にも合うとは限らへんのよな。歌そのものを楽しむことと、映画の最後にその歌が流れてどう感じるかは、別の話やと思います。
ただし、これは音楽と映像の関係についての考察です。確認できた制作側の説明を超えて、「歌詞のこの部分が嫌われた」「安田さんの声が原因だった」などと具体的な理由を付け足すことはできません。
主題歌とイメージソングは何が違う?
「主題歌」という言葉から、映画の冒頭やエンディングで流れる歌を思い浮かべる人は多いでしょう。一方、作品のイメージを伝えるための歌は、本編で使われなくても成立します。
ただし、主題歌・テーマソング・イメージソングという呼び方は、作品や商品によって使われ方が異なります。「主題歌と書いてあるなら、必ず本編で流れる」という一律のルールで判断すると、今回のような例で混乱してしまいます。
実際に、レーベル公式のアルバム『スタジオジブリの歌』では、安田成美さんの「風の谷のナウシカ」が収録されています。商品全体も、主題歌・挿入歌を集めたものとして紹介されています。
出典:スタジオジブリレコーズ公式『スタジオジブリの歌』収録曲
そのため、「主題歌集に入っているのに、映画では聞こえない」という疑問には理由があります。アルバムがまとめている作品関連の歌と、本編で実際に使用された楽曲の範囲が、完全に一致するとは限らないからです。
安田成美さんの歌は『ナウシカ』に正式に関連する楽曲ですが、本編で流れる歌ではありません。この二つを分けると、位置づけが分かりやすくなります。
では、映画で聞こえる音楽は誰が作ったものなのか。次は、安田成美さんの歌と、本編を支える久石譲さんの音楽との違いを見ていきます。
映画本編の音楽は久石譲|安田成美の歌とは別に考える
映画『風の谷のナウシカ』の音楽を担当したのは、久石譲さんです。スタジオジブリの公式作品ページでも、音楽担当として名前が掲載されています。
一方、安田成美さんが歌う「風の谷のナウシカ」の作曲は細野晴臣さんです。同じ作品に関係する音楽でも、映画本編の音楽とシンボル・テーマソングでは、作り手と役割が異なります。
映画音楽には、場面の動きや空気を支える役割があります。人物が話しているとき、何かに気づくとき、緊張が高まるとき。映像の流れに合わせて、音楽が入る場所や長さも変わります。
それに対して、一曲の歌は、映像がなくても聴ける一つの作品です。歌詞とメロディーによって、曲そのものの世界を作ります。どちらが上という話ではなく、映画とどう関わるかが違うのです。
『ナウシカ』の音楽を探す場合も、安田成美さんの歌を聴きたいのか、映画の場面で流れた音楽を聴きたいのかを分けると、目的の曲を見つけやすくなります。
シンボル・テーマソングとイメージアルバムも別のもの
もう一つ混同しやすいのが、安田成美さんの歌と、久石譲さんが手がけたイメージアルバムです。
どちらも『ナウシカ』に関連する音楽ですが、「イメージ」という言葉が出てくるからといって、同じ企画や同じ楽曲を指しているわけではありません。
| 音楽の種類 | 作り手・内容 | 区別するポイント |
|---|---|---|
| シンボル・テーマソング | 安田成美が歌う「風の谷のナウシカ」。作詞は松本隆、作曲は細野晴臣 | 映画に関連する歌だが、本編では流れない |
| イメージアルバム | 久石譲による、作品のイメージを音楽にしたアルバム | 安田成美の歌とは別の音楽企画 |
| 映画本編の音楽 | 久石譲が担当 | 映像の場面に組み合わされる音楽 |
イメージアルバムとサウンドトラックも、同じ名称ではありません。前者は作品から膨らませた音楽のイメージ、後者は映画のために作られた音楽を聴く際の手がかりになります。
ただし、アルバムの曲と本編の曲が、すべて一対一で対応するとは限りません。曲名や編曲が異なる場合もあるため、「同じナウシカのアルバムだから、探している歌が必ず入っている」とは考えず、収録曲を確認するのが確実です。
音楽の制作過程については、web岩波「ジブリと音楽」第1回で、イメージアルバムと本編の音楽との関係も説明されています。
本編で流れないことから、どこまで分かる?
テレビ放送だけでカットされた歌ではない
安田成美さんの歌が聞こえないのは、テレビ放送の編集だけが原因ではありません。制作時点で本編に使用しない判断がされた曲です。
そのため、「テレビでは流れなかったけれど、映画の完全版ならエンディングで聞けるはず」と捉えると、制作経緯と食い違ってしまいます。
歌唱力が理由だったと決めつけない
歌が採用されなかったと聞くと、歌い方や歌唱力の問題だったのでは、と考える人もいるかもしれません。
しかし、今回確認した鈴木敏夫さんの説明は、映画の内容と音楽の相性についてのものです。安田成美さんの歌唱力が不採用の理由だったと断定する根拠にはなりません。
自分が歌を聴いてどう感じるかと、制作側がなぜ使わなかったかは、分けて考えたいところです。好みについての感想を、そのまま制作の事実に置き換えることはできません。
本編未使用でも、作品と無関係な歌ではない
逆に、「映画で流れないなら、ナウシカとは関係ない曲なのか」というと、そうではありません。
レーベル公式の『スタジオジブリの歌』には、安田成美さんの「風の谷のナウシカ」が収録されています。映画本編に使われなかったことと、作品に関連する歌として扱われていることは、両立します。
まとめ|映画で流れない理由は、作品に合う音楽を優先したため
安田成美さんが歌う「風の谷のナウシカ」は、映画本編では使用されていません。鈴木敏夫さんの説明によると、制作側が映画の内容との相性を優先した結果、使わないという判断になりました。
その歌には「シンボル・テーマソング」という位置づけが与えられています。一方、映画本編の音楽を担当したのは久石譲さんです。
「ナウシカに関係する歌」と「ナウシカの映画で実際に流れる音楽」を分けることが、疑問を解くポイントです。
ここからは考察ですが、本編で使われなかった歌も、映画とは別に楽しむことができます。映画に合うかどうかと、一曲として好きかどうかは別やからね。制作の背景を知ったうえで聴くと、映像と音楽の組み合わせについても、違った見方ができるのではないでしょうか。

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